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メビナビ・スペシャル
岬 浩一作品『ラゴンの子』を詠む
らくばくと くうをみあげし そうぼうに ゆめをこがれる おとめごをみる
■林(コンビニのおばちゃん)■
ラゴンの子が、寂しそうな眼差しで看板を見上げていました。
最初、私は「怪物だわ」と恐怖を感じたのですが、
その空虚に満ちた瞳は、夢を焦がれる少女のようでした。
※空を見上げし→くうをみあげし=空(上空)を見上げる。
ここでは「空虚・寂しさ」を表す言葉・「空(くう)」と掛けています。
※双 眸 →そうぼう=両目。両方の瞳。
※乙女子 →おとめご=「乙女・少女」の雅詞。
よのひとは みなひとしいと いいながら いぎょうのものに れいがんしせん
■澤口祐市■
世の中の人は、みんな平等だと言っていますが、
私のように包帯を巻いたもの、眼が見えないもの、足が動かないものなど、
自分たちとは違う人に対しては冷たい視線を浴びせるものです。
それが、現実なのでしょうか。
※皆等しひ→みなひとしい=みんな、平等である。
※異 形 →いぎょう=普通と違うもの。人。
※冷眼視 →れいがんし=冷たく見下すような視線。
よのひとは ゆめはかなうと いいたるが いぎょうのものに さくはなはなし
■ラゴンの少女■
世の中の人は、頑張れば夢は叶うと言っていますが、
私のように普通と違う者には、誰も夢を手助けしようとしてくれません。
友達もできませんし、学校にも行けない。
結婚だって叶えられないのです。
私の夢は、いつ花開くのでしょうか?
ラゴンの女のコは、澤口さんと同じ考えや感情を持っていると思うんです。
だから、上の句・下の句の冒頭部は、敢えて同じ言葉を持ってきました。
おびえつつ こころあらずに そうをして かんぱいされて しゃいをかんずる
■高校生■
「怖い」という気持ちが先立って、真剣に演奏をしようという気持ちがないまま、
GUYSの人に頼まれて演奏をしました。
そんな中途半端な演奏だったにもかかわらず、
あのラゴンという怪獣は、私達に深く感激してくれたのです。
何だか申し訳なくて……
あなたのことを怖がったり、ニュースを聞いたときにバカにしたりして、
本当にごめんなさい……
※心在らずに→こころあらずに=心を込めずに。
※奏をして →そうをして=演奏をして。
※感 佩 →かんぱい=深く感動して感謝を示すこと。
すくむての ちせつなしらべに しみいられ いたらぬさらい せつにせいずる
■高校生・其の弐■
恐怖で震える指先で何とか演奏をしました。
そんな雑で、しかもプロの楽団でもない私達・高校生の演奏なんかに
ものすごく感動してもらって……
今まで私は「どうせプロでもないし、友達と遊んだり、好きな人と一緒にいることのほうが楽しいもん」と、
コンクール前にも関わらず「とりあえずカタチになればいい」と
練習をあまり真剣にやっていなかったのですが……
そんな適当な練習姿勢を私は本当に反省するばかりです。
こんなに感動してもらうのだったら、もっと真剣に練習に取り組んで、
もっと良い曲を聴かせてあげればよかった……
それまで、ラゴンを怖がったり、バカにしたりする高校生たちが、
(精神的には)同年齢のラゴンに「ごめんなさい」と謝るくだりは、
本当に泣いちゃいました。
※竦む手の →すくむての=恐怖で震える手(指)の。
※稚拙な調べに→ちせつなしらべに=未熟な演奏に。
※沁み入られ →しみいられ=深く感動されて。
※至らぬ復習ひ→いたらぬさらい=練習量の足りない。「復習い」とは、繰り返して練習すること。
※切に省ずる →せつにせいずる=本当に反省するばかりです。
「なんか……今回は苦労したみたいですね……」
「高校生のくだりで泣いてしまって^^;
今までは、主に名前があがっている人しか歌をつくらなかったのですが、
この高校生たちの歌をひとつでも読み上げたかったんです。
それほど悲しかったし、感情移入しちゃったから……」
「ごくろうさまでした」
第8話「GUYSウル博」へ進む
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