●GUYS司令室
司令室のモニターに、ミサキ女史の姿が映し出されている。
ミサキ 「《通信》(重苦しく)GUYS総本部は、メフィラス星人についての対応を話し合っています。間もなく答えが出るでしょう」
ミサキ、用件を手短に伝えると通信を切る。
通信が切れた後、誰一人として口を開こうとはしない。
コノミ 「……メフィラス星人に従ったほうがいいのかも……」
コノミ、沈黙を破って言葉を漏らす。
テッペイ 「(頷いて)そうすれば、イジメも交通事故も……戦争もない平和な世界が訪れるわけですからね……」
マリナ 「メフィラス星人に素直に従えば、カドクラさんの命だって……」
ジョージ 「…………」
リュウ 「…………」
全員、心が傾き始めたとき、サコミズが机をバンっと叩く。
サコミズ 「泣き言を言うのは、いい加減にしろっ!」
サコミズ、立ち上がって一同を見回す。
サコミズ 「みんな、情けないぞっ! 戦う前から負けることだけを考えてどうするっ!」
一 同 「…………」
サコミズ 「(全員を睨むように見渡し)おまえ達は、今まで勝てる相手を選んで戦ってきたのかっ! 勝算が少しでもないと思えば、例えそれが残虐な宇宙人が相手でも屈してしまうのかっ? おまえ達の心の中に、地球人としての……GUYSとしての誇りはないのかっ!」
一 同 「…………(俯く)…………」
アラシ 「(不意に)サコミズ隊長の言うとおりだ」
司令室の扉が開き、恰幅の良い老年の男性が入ってくる。
立派な背広のようなものを着ており、地位が高い人物であることをうかがわせる。
サコミズ 「(老年の男性を見て)アラシ長官……」
ジョージ 「長官……?」
アライソ 「ああ、そうだ。アラシ長官、GUYS上層部のお偉いさんだ」
アライソ、アラシの後ろから入ってくる。
アライソ 「そして、GUYSの前身である防衛チーム……『科学特捜隊』の隊員でもあった男だよ」
テッペイ 「科学特捜隊……っ?」
テッペイ、その言葉に目を丸くする。
テッペイ 「科学特捜隊といえば、数多くの凶悪な宇宙人や怪獣を撃退してきた、エキスパート集団ですよね……!」
マリナ 「私も聞いたことがあるわ……その隊員の中に、アラシという射撃の名手がいたって……」
ジョージ 「それが、まさか……」
アライソ 「(頷き)この男だ……もっとも、今は単なる太りすぎのジジィだがな」
アラシ 「テメェこそ、ハゲたジジィになりさがってるじゃねぇかっ」
アライソの悪態に、アラシも皮肉で応える。
リュウ 「父つぁん、長官と知り合いなのか?」
アライソ 「まぁ、悪縁のようなものだな。俺がまだ駆け出しの整備員だった頃、初めて修理を受け持ったメカが、コイツが壊したジェットビートルだったんだよ。この男が、まぁ無茶ばっかりしやがるせいで、毎日毎日修理ばかりさせられてな。ホント、良い迷惑だったぜ……」
アラシ 「ふんっ。そのおかげで、おまえの修理の腕も上がったってモンじゃねぇか」
アライソ 「何を言ってやがんだっ! てめぇ、少しはビートルを壊したことを反省しやがれっ!」
アラシ 「どうして、おまえに説教されなきゃなんねぇんだっ! このトウヘンボクっ!」
アライソ 「なんだとぉぉ〜っ?」
アラシとアライソ、子供のように言い合いを始める。
サコミズ 「(おそるおそる)あ、あの……アラシ長官。お話は……?」
アラシ 「(我に返って)あ、そうだった……ハゲ親父と言い争ってる場合じゃないねぇな」
アラシ、ゴホンと咳払いをして、
アラシ 「さっきもサコミズ隊長が言っていたが、君たちは今まで損得勘定のみで地球の平和を守ってきたのか?」
アラシ、隊員たちを見渡す。
アラシ 「そうじゃないだろう? 計算抜きで……ただ、みんなを守りたいという気持ちだけで戦ってきたんだろう?」
一 同 「…………」
アラシ 「メフィラス星人が言う、戦争もイジメもない世界というのは、まさしく天国のような世界に違いない。人類にとっての理想郷とも呼べる世界だろうな……しかし、幸せは与えられるものではなく、自分で切り開いていくものだ……可能性についても、また同じだよ」
○回想・全ウルトラシリーズ
科学特捜隊など、様々な防衛隊の戦闘機が怪獣や宇宙人に向かっていく。
ゼットンに立ち向かう、科学特捜隊……
ツインテールの片目を攻撃する、MATの面々……
ヤプールが操る怪獣軍団に挑む、ZATの戦闘機……
怪獣の攻撃を掻い潜りながら地雷を仕掛ける、MACのジープ……
フォーメーション・ヤマトで怪獣を攻撃する、UGMの戦闘機……
絶体絶命のピンチを切り抜けながら、怪獣や宇宙人を撃退していく。
●GUYS司令室
アラシ 「先代の防衛隊員たちは、どんなピンチに陥ろうとも決して諦めなかった。戦うことをやめなかった。戦闘機や基地を失おうとも、ウルトラマンが負けてようとも……世論や上官から、どれだけバッシングを受けようとも……俺達は、必死で戦い続けけた。それは、富や名声を得たいからじゃない。俺達の手で、地球と……地球に住む人々を守りたかったからだ……」
アライソ 「(頷き)リュウ、パスカルの野郎が言ったとおり、力なき正義は確かに無能かもしれねぇ。正義を振り翳すには、どんな相手にも引けを取らないほどの大きな力が必要だからな。力のない正義や道理は簡単に押し潰されちまう……『正義は勝つ』という言葉が真理ならば、俺達に『正義』というものはないのかもしれん……」
リュウ 「…………」
アライソ 「しかしな、リュウ……正義なき力は圧制そのものであることも違いない」
アライソ、リュウの目をまっすぐと見つめる。
アライソ 「メフィラスは暴力こそ使っちゃいねぇが、ユタカ達を利用しておまえの心に踏み込もうとした。おまえの想い出を傷つけ、おまえの正義を土足で踏みにじろうとしやがった……その時点で、アイツは充分に悪質な奸賊(かんぞく)だよ」
アラシ 「(頷き)そんな悪質宇宙人に屈しちゃいかん。おまえ達の正義を……GUYSの誇りを貫き通せっ!」
リュウ 「けど、あんな強敵にどうやって勝てばいいのか……」
アラシ 「しっかりしろ、若造っ!」
アラシ、リュウの両肩を叩く。
アラシ 「アイハラ・リュウ……! おまえは、セリザワ隊長から何も受け継いではいないのかっ?」
リュウ 「え……?」
アラシ 「おまえは、セリザワ隊長から『正義の炎』を受け継いだんじゃないのか?(リュウの胸を指し)その正義の炎は、おまえの胸の中から完全に消えてしまったのか?」
リュウ 「……正義の……炎……」
リュウ、自分のメモリーディスプレイを取り出す。
リュウ 「…………(炎のエンブレムに、セリザワのイメージが重なる)…………」
アラシ 「地球の平和は、我々人類の手で守り抜かなければならない……セリザワ隊長から、おまえはそのように教えられたんじゃなかったのかっ? もしも、心の中で『正義の炎』が燻ぶっているのなら、そいつをもう一度燃え上がらせてみせろっ!」
アラシの一喝に、リュウの虚ろな瞳に光が灯る。
リュウ 「……そうだったな。先輩が敵になっていようが、メフィラス星人がどれほど強かろうが……そんなの関係ねぇ……っ」
リュウの口端に、不敵な笑みがこぼれる。
リュウ 「俺達GUYSの使命は、怪獣や宇宙人から地球を守ること……っ! メフィラス星人に地球を守ってもらおうとか……そんな甘っちょろいことをほざいていたら、GUYSの名が廃るぜっ! なぁ、みんなっ!」
ジョージ 「(目に光が宿り)……その通りだ! 試合終了のホイッスルは、まだ鳴っちゃいないっ。完全に敗北が決まったわけでもないのに、地球を易々と明け渡してたまるかっ!」
マリナ 「(頷き)ゴールを決めるまで、勝負の行方はわからない……っ!」
テッペイ 「宇宙人の思惑通りにあっさりと諦めてしまっていたら、歴代の防衛隊の人たちに申し訳が立ちませんからね……っ!」
コノミ 「戦いましょうっ! ギリギリまでっ!」
リュウの闘志に後押しされるように、他の隊員たちも覇気を取り戻していく。
そんな部下達の様子に、サコミズも笑顔をこぼす。
サコミズ、アラシの方に視線をチラッとそそぐ。
アラシ、その視線に気がついて少年のように微笑んでみせる。
●円盤内
そんなGUYS隊員達の様子は、メフィラス星人の円盤のモニターにも映し出されている。
ミライ 「リュウさん……! みんな……っ!」
ミライ、感激して目を潤ませる。
メフィラス「な、何故だ……っ? 絶望に打ちひしがれ、あれほど暗澹としていたというのに……どうして立ち直ることができる……っ?」
メフィラス星人、動揺のあまりに超能力がゆるんでしまう。
ミライ、力が弱まった隙をついて、光のロープを引きちぎって脱出する!
ミライ 「(睨みつけて)見たか、メフィラス星人っ! これが、地球人の心の強さだっ!」
メフィラス「うぬぬ……っ」
メフィラス星人、悔しそうに拳を握り締める。
ミライ 「もし、おまえが地球の侵略にこれ以上こだわるのであれば……僕も黙っちゃいないっ!」
いつの間にか、ミライの左腕にメビウスブレスが装着されている。
メフィラス「宇宙人であるキミが、地球人の代わりに私と戦おうと言うのか?」
ミライ 「いや、地球人の代わりに戦うんじゃない。地球人としておまえと戦うんだ……っ!」
メフィラス「……どういうことだ?」
ミライ 「キミの言うとおり、確かに僕はM78星雲出身の宇宙人に違いない……けど、心は地球人のつもりだっ!」
メフィラス「つまり、『地球の心』を代表として、この私と戦いたいと言うことか……?」
ミライ 「そうだ……っ」
メフィラス「……よかろう。(語気が荒くなり)その申し出、受けてやろうっ!」
それと同時に、メフィラス星人の瞳が青い閃光を放つ。
ミライもまた、メビウスブレスから眩いばかりの光を迸らせる。
●浦賀湾
浦賀湾を臨む土地に、巨大な2本の光の柱が昇る!
それぞれの光の柱から、メビウスとメフィラス星人が出現する!
両者、同時にファイティングポーズを取る。
●GUYS司令室
コノミ 「(一同を向いて)浦賀湾に、メビウスとメフィラス星人が出現しましたっ!」
モニターに、両者の姿が映し出される。
マリナ 「(嬉々として)やっぱり、メビウスは死んでなかったのねっ!」
ジョージ 「あったりまえだっ! ウルトラマンが簡単に死ぬもんかっ」
一同の表情に、安堵の笑みがこぼれる。
リュウ 「父つぁん! ガンブースターの修理はどうなってんだ?」
アライソ 「万全の状態よ。(鼻息荒く)いつでも飛べるぜっ!」
リュウ 「(セリザワに向き直り)隊長っ! 出撃しますっ!」
サコミズ 「(頷き)GUYS、サリー・ゴーっ!」
一 同 「GIGっ!」
一同、素早く司令室から飛び出していく。
●浦賀
メビウスとメフィラス星人の戦いが勃発する。
さすが、ウルトラマンと五分の戦いを繰り広げた異星人……格闘戦ではメビウスに引けを取らない!
だが、地球人の心を代表して戦うメビウスも負けてはいない。
メフィラス星人の一瞬の隙をつき、彼の態勢を崩すことに成功するっ!
メフィラス「ぐぬぅぅぅ……っ(地面に倒れる)」
メビウス、立て続けに攻撃しようとするが……その背後にロケット弾が命中する!
メビウス 「グァァァっ!(片膝をつく)」
メビウスが振り返ると、背後には三機のガンクルセイダーがある。
更に、緑色の光の渦巻きと共に、マケット=バルタンが出現する!
ウルトラマンメビウス VS メフィラス&バルタン&ガンクルセイダー連合軍の戦い!
●ガンクルセイダー1号機・操縦席
ユタカ 「バルタン、もう遠慮はいらない。ウルトラマンメビウスを倒せ……っ! 地球人の希望を完膚なきまでに破壊してやるのだ……っ!」
その表情は、人形のように冷たい。
●浦賀
メビウス、メフィラスとバルタンの連続攻撃に翻弄されている。
……と、ガンクルセイダーの1機が、メビウスに急速接近を行う!
メビウス、さすがに地球人を攻撃することはできない。
ガンクルセイダーの攻撃に備えて、メビウスは防御の構えを取る。
だが、ガンクルセイダーは攻撃を全く行わず、メビウスの目の前で急速上昇を行う。
メビウス 「……?」
メビウス、不意をつかれ、ガンクルセイダーを見上げる。
その隙をついて、残りの2機が一斉射撃っ! メビウスに対してのフォーメーション・ヤマト!
メビウス 「ウワァァっ!(仰向けに倒れる)」
そこに待ち構えていた者は、マケット=バルタン星人!
マケット=バルタン、大きなハサミでメビウスの首を掴み……強引に起き上がらせる!
メフィラス星人、バルタンに捕らえられたメビウスに攻撃を仕掛けようとするっ! そのとき……!
●ガンブースター・操縦席
リュウ 「ウルトラ五つの誓い・一つっ! 他人の力を頼りにしてんじゃねぇっ!」
浦賀へ駆けつけたリュウ、メフィラス星人の背後から攻撃を開始!
●浦賀
メフィラス星人、ガンブースターの攻撃にバランスを崩す。
●ガンクルセイダー1号機・操縦席
ユタカ 「リュウか……っ!」
ユタカ、ガンブースターを確認して、機体を反転させる。
●浦賀
3機編隊を組んだまま、ガンブースターに攻撃しようとするガンクルセイダー。
そのとき、上空からビーム攻撃が仕掛けられる。
ガンクルセイダー、ビーム攻撃を避けたためにフォーメーションが崩れる。
●ガンブースター・操縦席
ジョージ、ガンクルセイダー3号機の背後につく。
ジョージ 「おまえの相手は、この俺が引き受けてやるぜっ!」
●ガンローダー・操縦席
ガンローダーは、ガンクルセイダー2号機をマークしている。
マリナ 「あなた達の相手は、私がやるわっ!」
●ガンウィンガー・操縦席
ガンウィンガーは、ガンクルセイダー1号機の背後につく。
リュウ 「ユタカ先輩っ! アンタの相手は……この俺だっ!」
●ガンクルセイダー1号機・操縦席
マサヤ 「ふんっ。一騎討ちというわけか……」
ユタカ 「リュウ、俺達に勝つつもりか?」
リュウ 「《通信》ああ、そのつもりだっ!」
ユタカ 「……上等だっ」
ユタカ、操縦桿をきって、ガンブースターに向かっていく。
●浦賀
浦賀の上空で繰り広げられる、新生GUYSと旧GUYSのドッグファイト!
メフィラス星人とマケット=バルタン、それを後目にメビウスへの攻撃を行おうとする。
それを阻むように、マケット・ウィンダムが出現するっ!
テッペイ 「(メモリーディスプレイを構え)行け、ウィンダムっ! バルタン星人を倒すんだっ!」
ウィンダム、バルタン星人へと果敢に向かっていく。
メビウス、ようやくメフィラス星人と1対1になる。
メビウス、ブレイヴモードへと変身! 左腕に光の剣が出現する!
光の剣を、サッと構えるウルトラマンメビウス。
メフィラス星人もまた、右手にサーベルを出現させる。
●浦賀湾
海上のガンローダー、ガンクルセイダーに追われている。
ガンローダー、海面スレスレの高度で、ガンクルセイダーの攻撃をかわしている。
●ガンクルセイダー2号機・操縦席
エリカ 「(ガンローダーを追いながら)ふふっ、もう諦めなさいよ」
マリナ 「《通信》諦めないわよ……っ!」
エリカ 「……?」
●ガンローダー・操縦席
マリナ 「(笑みをこぼし)背中を追いかけられることは、レースで慣れちゃってるんだからねっ」
マリナ、背後から迫るガンクルセイダーのエンジン音に耳を済ませる。
マリナ 「(カッと目を見開き)今だっ!」
マリナ、操縦桿を思いっきり引き上げる。
マリナ 「……ウルトラ五つの誓い・一つ……っ! 海路(みち)を飛ぶときは……風車(くるま)に気をつけることっ!」
マリナ、メテオールを発動させるっ。
●浦賀湾
逃げ続けるガンローダー、尾翼部をガンクルセイダーに向けるようにして持ち上げる。
ガンローダーのジャイロ(風車)が高速回転! ブリンガーファンを発動させる!
ブリンガーファンの竜巻に巻き込まれ、海面の水が吸い上げられる。
水の竜巻、後部から迫りつつあったガンクルセイダーを吹き飛ばす。
●ガンクルセイダー2号機・操縦席
エリカ・マキ「きゃぁぁぁぁぁぁぁーっ!」
錐揉み状態のまま、上空高く舞い上げられるガンクルセイダーっ!
●浦賀湾
ジョージが操るガンブースターも、ガンクルセイダー3号機に追われる形となっている。
ガンブースター、機首を持ち上げて……急上昇を開始するっ!
ガンクルセイダーも、それを追うようにして急上昇を開始っ!
●ガンブースター・操縦席
高度計がグングンと上昇し、強烈なG(重力)が、ジョージの全身に襲いかかる。
その背後には、ガンクルセイダーが迫るっ!
ジョージ 「(脂汗を流して)……来たなっ」
ジョージ、重力に顔をしかめたまま、ガンクルセイダーの追尾を確認する。
ジョージ 「ウルトラ五つの誓い・一つ……っ! 天気の良い日に直射日光を見ないことっ!」
ジョージ、機体をグイッと反転させるっ!
●ガンクルセイダー3号機・操縦席
ガンブースターの陰になっていた太陽、ガンブースターが反転したことで姿を現す。
眩いばかりの陽光が、ガンクルセイダーの操縦席を照らす。
トシヒロ 「うっ……!(眩さに目を細める)」
ガンブースター、急降下したまま突進してくる!
●浦賀湾
ガンブースター、ガンクルセイダーと擦れ違いざまに攻撃を開始っ!
ガンクルセイダー、黒煙を噴き出す!。
ガンブースター、海面に衝突するギリギリのタイミングで機首を持ち上げる。
●ガンブースター・操縦席
ジョージ 「(安堵の息を漏らし)ふぅ……こんな荒技、もう二度とゴメンだな……」
ジョージ、冷や汗を拭って呟く。
●浦賀
メビウスとメフィラス星人、激しい格闘戦を展開している。
その向こうで、ウィンダム、マケット=バルタンと激しい戦いを繰り広げている。
バルタン星人、前回のメビウスとの戦いとは違い、分身術や瞬間移動などを駆使して戦っている。
ウィンダム、バルタン星人の攻撃によって追い詰められていく。
テッペイ 「(頭を抱えて)くっそ……っ! 決定的なダメージを与えることができない……っ!」
テッペイの背後に、一台のジープが停まる。
ジープに乗っていたのは、アライソ整備長とアラシ長官である。
アラシの片手には、スパイダーショットが握られている。
テッペイ 「それは……スパイダーショット……っ!」
アラシ 「(ニッと笑い)おいっ! あのマケット怪獣に、バルタンの野郎を捕まえるよう命令しろっ!」
テッペイ 「……えっ? あ、は、はいっ! ウィンダムっ! バルタン星人の動きを止めろっ!」
ウィンダム、バルタン星人の腕を掴む。
アラシ 「コイツには、四十年前に大きな借りがあってな……」
アラシ、バルタン星人にスパイダーショットを構える。
アライソ 「耄碌〈もうろく〉して腕が衰えちゃいないだろうな?」
アラシ 「へっ、馬鹿を言うな。(鼻を鳴らして)やい、バルタンっ! 四十年前は、よくも俺をカチンコチンにしやがったなっ! (顔に狙いを定めて)おまえのその面(ツラ)……見忘れたことはなかったぜっ!」
アラシの指が引き金にかかる。
アラシ 「(テッペイに)おいっ。ウルトラ五つの誓いというヤツに、腹ペコがどうのってヤツがあったよな?」
テッペイ 「あ、はい。腹ペコのまま、学校へ行かないことっていうものが……」
アラシ 「そうそう、それだよ。(ニヤリと笑い)……バルタン、これでも腹いっぱい喰らってやがれっ!」
アラシ、バルタンの口元を目掛けて銃を撃ち放つ!
バルタン 「(口に命中・爆発!)グォォォォォーっ!」
たまらず、その場に転倒してしまうバルタン星人っ! 光の粒子となって消える!
テッペイ 「やったぁっ!」
アラシ 「どうだ、バルタン……っ! 俺の怒りを込めた一撃の味は……っ!」
アラシ、積怨を晴らして晴々とした表情を浮かべる。
●ガンクルセイダー1号機・操縦席
マサヤ 「ユタカ。マケット=バルタンが敗れたみたいだぞ」
ユタカ 「まぁ、いいさ。マケット=バルタンなんて、何度でも蘇らせることができる。それより、今は目の前の敵を叩くぞ!」
ユタカ、逃げていくガンウィンガーに攻撃をしかける。
●ガンウィンガー・操縦席
リュウ 「(回避しながら)俺達の翼を撃ち落とされてたまるかっ! ファンタム・アビエイションっ!」
リュウ、メテオールを起動させる。
●浦賀
ガンウィンガー、分身をしているかのような動きで攻撃を器用に避け続ける。
そして、ガンクルセイダーの背後に回り込む。
●ガンクルセイダー1号機・操縦席
ユタカ 「俺達の背後に回り込んで……それで、勝ったつもりか? 甘いよ、リュウ……」
ユタカもまた、ガンクルセイダーのメテオールを作動させる。
●浦賀
ガンクルセイダーも、ファンタムアビエイションを展開っ!
ガンウィンガーの攻撃を回避しつつ、ミサイルを発射するっ!
ミサイル、ガンウィンガーに命中っ! 大きな爆発の炎が上がるっ!
メフィラス星人と戦闘を行っていたメビウス、その爆発を見て動きが止まる。
メフィラス星人、この隙を逃すものかと連続攻撃を行う。
●ガンクルセイダー1号機・操縦席
ユタカ 「悪く思うなよ、リュウ……」
マサヤ 「おまえが、俺達に逆らわなければこんなことにはならなかったんだ……許せ」
ユタカ達、燃え上がる爆発の炎を見つめながら呟きを放つ。
その目は、どことなく寂しそうにも見える。そのとき……
リュウ 「《通信》残念だが、俺はまだくたばっちゃいないぜっ!」
ユタカ・マサヤ「(驚愕)……っ!」
ユタカとマサヤ、爆炎に目をこらす。
●浦賀
爆炎、時間経過と共に次第に晴れていく。
そこに存在していたのは……青いバリアーに包まれたガンウィンガー!
アライソ 「(ニヤリと微笑み)キャプチャー・キューブで、ガンウィンガーを守りやがったのか……単調な攻撃しかできねぇオメェにしちゃ、良い戦法を思いついたじゃねぇか」
●ガンウィンガー・操縦席
リュウ 「猪突猛進な攻撃じゃ、先輩達には勝てないからな……っ。(狙いを定めて)ウルトラ五つの誓い・一つっ! 土の上を腹底で駆けずっていやがれっ!」
リュウ、ガンクルセイダーにビームを発射するっ!
●浦賀
ガンクルセイダー、ガンウィンガーの攻撃を避けきれないっ!
右翼部に命中し、煙を吹きながら地面に向かって失速するっ!
ガンクルセイダーの機体の腹底が、地面をえぐるようにして滑っていく。
メフィラス「…………」
メビウスの首を絞め上げていたメフィラス星人、ガンクルセイダーの墜落を見て手を緩める。
メビウス 「…………?」
メビウス、苦しそうに肩で息をしながら、メフィラス星人を見つめる。
メフィラス「《テレパシー》……メビウス。戦いはやめよう……(構えを解く)」
メビウス 「《テレパシー》どういうことだ……?」
メフィラス「《テレパシー》四十年前も……そして、今回も……私は地球人の心に負けてしまった……どんな状況下に陥ろうとも、決して諦めようとしない……そんな不屈の魂に……」
メフィラス星人、メビウスの顔を見つめる。
メフィラス「《テレパシー》メビウス……キミは、地球がなぜ四半世紀も宇宙人の侵略行為を受けなかったかわかるかね?」
メフィラス星人の問いかけに、メビウスはゆっくりと首を左右に振る。
メフィラス「《テレパシー》宇宙には多くの知的生命がいるが……その大半が諦めのいい者ばかりだ。彼等はたった一回でも失敗すれば、その過ちから逃れようとする。失敗の数が少なければ少ないほど、被る損失はそれだけ小さくなるからね。彼等は物事を簡単に諦めることで損失を減らし、自分達の文明を向上させてきたのだ」
メビウス 「…………」
メフィラス「《テレパシー》しかし、地球人は違う……どんな苦境や恫喝にもめげず、甘い誘惑などに唆されることもなく、最後の最後まで自分を信じて戦い抜こうとする……それを、『往生際が悪い』『未練がましい』と言う者もいるかもしれないが……諦めようとしないその強い心が、我々の計算を越えた無限の可能性を生み出していることも事実だ……」
メフィラス星人の頭上に、円盤が出現する。
メフィラス「《テレパシー》地球人がそんな不撓不屈の心を持ち続けているかぎり、私がどれだけ知恵を巡らせたとしても、この星の侵略を成し遂げることは決してできないだろう……」
メフィラス「《テレパシー》(サッと右手を上げて)ここは、素直に敗北を認めて立ち去るとしよう……」
円盤の真下から、メフィラス星人に向けて青白い光線が放射される。
メフィラス星人、青白い光に包まれて消える。
円盤、西の空の彼方へと飛び去っていく。
メビウスが円盤の去った方角を見ると……美しい夕陽が山間に沈もうとしているところである。
メビウス、いつまでも夕陽を見つめている。
●GUYS司令室
ミサキ、隊員たちを見回して語る。
ミサキ 「あの後、ガンクルセイダーが墜落した現場周辺を隈なく捜索してみたのですが……タチバナ・ユタカ以下、5名の旧GUYSクルーの消息を掴むことはできませんでした……」
サコミズ 「そう、ですか……」
コノミ 「一体、ユタカさん達はどこへ行っちゃったんでしょうね……?」
コノミの一言に、全員が思案顔になる。
ジョージ 「地球侵略に手を貸した従犯者だからな。逮捕されることを恐れて、人目のつかないところへ逃亡したか……或いは、メフィラス星人と一緒に……」
マリナ 「ちょっと、ジョージ……っ!(リュウをチラッとうかがう)」
ジョージ 「あ……(無神経な発言に口を押さえる)」
マリナ 「(フォローするように)もしかすると、あの人達はメフィラス星人が作り出した偽者だったのかもしれないわよっ? ねっ、テッペイくんっ?」
テッペイ 「あ、え、ええ! 何しろ、あれだけの科学力を持っている宇宙人ですからね……!」
ミライ 「そうですよ! マケット・エイリアンと同じように、高分子ミストでコピーされた『マケットGUYS』だったのかもしれないし……」
ジョージ 「そ、そうだぜ、リュウ! 精巧に作られたアンドロイドだったっていう可能性だってあるわけだしなっ」
一同、フォローを行いながら、リュウの顔色をうかがう。
リュウ 「(ポツリと)……まぁ、先輩達やメフィラス星人が消えちまった今となっては……それは、永遠の謎になっちまったわけだ」
ミライ 「リュウさん……」
リュウの一言に、みんな黙り込んでしまう。
リュウ 「(一同の態度に気づき)おいおい、何でおまえらが沈んじまうんだよ? 俺のことなら、もう大丈夫だぜ?」
リュウ、吹っ切れたように微笑をこぼす。
リュウ 「先輩達は、先輩達……俺達は、俺達……だろ?」
マリナ 「(微笑んで頷き)そうね……」
ジョージ 「(同じく微笑み)どんなことがあろうとも、俺達の任務が変わることはない」
リュウ 「そういうこった」
リュウ、その場にスクッと立ち上がり、サコミズとミサキの前で姿勢を正す。
その横に、残り5名の隊員が整列する。
リュウ 「じゃあ、サコミズ隊長。俺達は訓練に行ってきます!」
サコミズ 「(大きく頷く)」
ミサキ 「知っての通り、これは危険を伴う訓練です。くれぐれも油断しないように」
一 同 「GIGっ!」
一同、二人に強く言葉を返して、司令室を飛び出していく。
●廊下
フェニックスネスト内、大きな窓が備え付けられている廊下にアラシが立っている。
アラシ、温厚そうな顔付きで空を見つめている。
彼の隣に、アライソが歩み寄ってくる。
アライソ 「……どうだ? 似てただろ?」
アラシ 「……あん?」
アライソ 「昔のオマエさんにさ。熱血で、短気で、奔放で……そのくせ、情に厚い……」
アラシ 「……へっ。俺は、もうちょっと飄然としていたよ。常識人だったしな」
アライソ 「……どうだかねぇ」
アラシの返事に、アライソが「ふんっ」と鼻息を鳴らす。
そんな二人の上空で、大きなエンジン音が轟いてくる。
二人の視線の先には、フェニックスネストから飛び立とうとしているガンフェニックスの姿がある。
アラシ 「《M》頑張れよ、若造……地球の平和は、おまえ達……若い世代にかかってるんだからな」
アラシ、息子を見守るような表情に変わっている。
●ガンフェニックス(ガンウィンガー)・操縦席
リュウとミライ、離陸前の最終チェックを行っている。
そんなリュウの脳裏に、ユタカの姿がよぎる。
○回想・ガンクルセイダー1号機
ユタカ 「悪く思うなよ、リュウ……」
マサヤ 「おまえが、俺達に逆らわなければこんなことにはならなかったんだ……許せ……」
ユタカ達、燃え上がる爆発の炎を見つめながら呟きを放つ。
その目は、どことなく寂しそうにも見える。
●ガンフェニックス・操縦席
リュウ 「《M》あのとき、先輩たちは本気で謝っていた……もしかすると……」
ミライ 「リュウさん? どうかされたんですか?」
リュウ 「ん? いや……」
リュウ、フッと微笑む。
リュウ 「俺達は、俺達……だもんな」
ミライ 「(聞き取れず)え?」
リュウ 「(笑って)……なんでもないさ。じゃあ、みんな! 行くぞっ!」
リュウの一言に、通信機から「GIG!」という声が戻ってくる。
リュウ 「(ニッと笑い)ガンフェニックス、バーナー・オンっ!」
大空に飛び立っていく、ガンフェニックス。
隊員達の笑顔、それぞれアップになって……GUYSのワンダバのリズムに乗せて……
■次回予告■
ミライ 「本当に何もしませんね……」
謎の宇宙人「ウルトラマンデアロウト」
科学者 「開発者のイチノモトだ」
謎の宇宙人「コレヲ防グコトハ」
ジョージ 「どんどんコースから外れてるぞ!」
謎の宇宙人「不可能ダ!」
科学者 「一難去ってまた一難だな」
無情の猫
リュウ 「他人事みたいに言うな!」
ご期待下さい。