戻る
当企画『ウル博オリジナル版・ウルトラマンメビウス』は、円谷プロ作品「ウルトラマンメビウス」の番外編として執筆されております。
そして今回のお話は、第26話「明日への飛翔」以後で、第29話「別れの日」(GUYSメンバーがミライ=メビウスと知る)までの間の物語となっております……
●勇壮なファンファーレと共にメイン・タイトル
●宇宙空間
大宇宙の彼方から、彗星のような発光物体が飛んでくる。
物体、青緑色の不気味な輝きを放っている。
この物体が向かう先には、青い水の惑星・地球がある。
●地球・大気圏外
今日もGUYSスペーシーの衛星が監視の目を光らせている。
●監視衛星内
数人の隊員が今日もレーダーを見張っている。
隊員1 「(レーダーに捕捉された物体に気づき)……ん?」
隊員2 「どうした?」
隊員1 「いや……何かが地球に近づいているんだよ。ほら」
隊員2 「(レーダーを覗き込み)……直径は……推定で20p程度か……ま、気にしなくていいだろ」
隊員1 「いいのか?」
隊員2 「ああ。そんだけ小さいんだ。どうせ、大気圏で燃え尽きるよ」
隊員1 「それもそうだな」
監視衛星の隊員たち、物体の接近を気に留めようとしない。
●大気圏外
物体、何者にも阻まれることなく、地球の大気圏へと突入する。
赤い炎に包まれながら、日本・関東方面へと落下していく。
●大利根ダム
関東地方の山間部にある、暗く水を湛えた関東地区で最大のダム。
月光を受けてキラキラと輝いている水辺を、ダムの係員が巡回している。
係員、上空から迫ってくる物体の光に気づいて顔をあげる。
係 員 「(驚き)な、なんだ、ありゃぁ……っ!」
物体、ダムの水面に激しく衝突して水飛沫を上げる。
その衝突音によって静寂が破られ、鳥達が一斉に騒ぎ出す。
係 員 「おいおい、何だよ、何が起こったんだっ?(水面を覗き込む)」
係員が覗き込んだときには、ダムの水面は元の静寂を取り戻している。
係 員 「(ポカンと)……何だったんだ? 今のは……」
●大利根ダム(水底)
物体、ダムの底に辿り着き、周囲にブワッと黒い泥を舞い上げる。
その途端、物体が「ドクン・ドクン……」と鼓動のような音を立て始める。
やがて、彗星の表面を包んでいた岩石が、雲母のようにパリパリッと剥がれ落ちる。
その中から出てきたのは……青い心臓のようなものである。
●サブタイトル
ヒビノ ミライ
アイハラ リュウ
イカルガ ジョージ
カザマ マリナ
アマガイ コノミ
クゼ テッペイ
ミサキ女史
サコミズ シンゴ
コウヤマ
マツオ
監視衛星隊員たち
ダムの係員
テレビリポーター
キッチンの男性
女子トイレの女性
バスルームの女性
プールの男性
マンションの旦那
マンションの主婦
マンションの男の子
スーパーの主婦たち
野次馬たち
脚本/葵女子♪
液体大怪獣
コスモリキッド
登場
●GUYS司令室
サコミズ隊長・ミライ・リュウ・マリナ・テッペイの隊員たち、思い思いの作業をしている。
その中に、ジョージとコノミの姿がいない。
隊長のデスクに置かれたデジタル時計、「3:00」という数字を表示する。
それと同時に、司令室の自動扉が開き、ジョージが入ってくる。
ジョージの右手にはトレイが持たれ、その上に7個分のマグカップとお茶菓子が置かれている。
ジョージ 「(笑顔を浮かべて)三時のお茶の時間だぜ、アミーゴっ!」
その光景に、一同は怪訝そうな表情を浮かべる。
ミライ 「(訝しんで)……ジョージさん、どうしたんですか?」
ジョージ 「どうしたって、何が?」
ミライ 「いや……ジョージさんがコーヒーを淹れてくれるなんて、何だか珍しいなぁと思って……」
テッペイ 「そうですよ……いつもなら、コーヒーは隊長が淹れてくれていましたからね」
リュウ 「おまえが気を配るなんて……今日、雨でも降るんじゃねぇか?」
サコミズ 「(クスッと笑い)ジョージから頼まれたんだよ」
ジョージ 「(微笑み)俺も隊長を見習って、美味いコーヒーを淹れられるようになりたくてな。それで、隊長から豆と道具を一式貸してもらったんだ。こういう事をするのは初めてだからさ、手間取っちゃったよ。ほい(ミライにひとつ手渡す)」
ミライ 「あ、ありがとうございます……」
ジョージ、司令室を見渡して、コノミの姿がないことに気がつく。
ジョージ 「(リュウに手渡しながら)おい、コノミはどうした?」
リュウ 「(受け取りつつ)コノミなら、リムを追いかけてどっかへ行っちまったぜ?」
ジョージ 「リムを追いかけて……? なんで?」
●フェニックスネスト・廊下
コノミ 「(廊下を走りながら)もーっ! リム、待ってよ〜っ!」
コノミの前方には、頭にメガネを乗せたリムの姿がある。
リム、廊下をピョンピョンと跳ねて、コノミと一定の距離を取つつ逃げ回っている。
コノミ 「メガネ、返してってばーっ! (人にぶつかり)あ、ご、ごめんなさいっ」
コノミ、視界がボンヤリとぼやけてしまっているため、人や柱などに何度もぶつかる。
●司令室
マリナ 「(しんみりと)リム、イジけてたんじゃないかなぁ……」
テッペイ 「かもしれませんね。ここ数日、ヤプール事件のせいで、僕等もバタバタしてましたから……リムのこと、全然構えなかったですもん……」
マリナ 「きっと、寂しかったのよ……」
ジョージ 「なるほどな……」
ジョージ、最後のマグカップをコノミの机の上に置く。
ジョージ 「暖かいうちに飲んでもらえないのは残念だが、そういうことなら仕方ないか……それじゃあ、おまえ達だけでも飲んでくれないか?」
ジョージの言葉を受けて、ミライ達はマグカップに口元を近づける。
リュウ 「(匂いを嗅いで)へぇ……香りはなかなかいいじゃねぇか」
ジョージ 「(誇らしげに)そりゃそうさ。隊長から伝授されたレシピ通りに作ったからな」
テッペイ 「では、さっそく……」
ミライ 「いただきまーす」
一同、一斉にコーヒーを飲む。
テッペイ 「(表情をしかめて)ん? んん……?」
リュウ 「うぅ〜ん……?」
コーヒーを飲んだ途端、全員が気難しい表情を浮かべる。
ジョージ 「ミライ、どうだ? 俺が淹れたコーヒーの味は……美味いだろ?」
ミライ 「え、えっと、その……(返事に窮する)」
ジョージ 「遠慮せずに、素直に答えていいんだぞ?」
ミライ 「あ、あの……ですね……」
ミライ、助けを求めるように、他のメンバーに視線を移す。
マリナ 「(困惑して)そうね……えっと……味は……悪くないよね?」
リュウ 「(同意を求められ)ああ、そうだな……けど、何と言うか……」
テッペイ 「物足りないと言うか……(言葉を濁らせる)」
ジョージ 「(ムッとして)何だよ? 感じの悪い奴等だな……言いたいことがあれば、ハッキリと言えばいいじゃないか」
ジョージ、文句を言いながら、自分が淹れたコーヒーを飲んでみる。
ジョージ 「ん……?(同じく表情をしかめる)」
リュウ 「な? 微妙なカンジだろ?」
ジョージ 「……うん」
リュウ 「別にさ、おまえが淹れたコーヒーがまずいってわけじゃねぇんだよ……」
マリナ 「(頷き)そんじょそこらの喫茶店が出すコーヒーに、引けは取らないと思うわよ。でもねぇ……」
テッペイ 「僕達の舌が、隊長の淹れてくれるコーヒーの味にすっかり馴染んじゃってるんですよね……」
●給湯室
コノミ、リムを給湯室に追い詰める。
コノミ 「つ〜かまえたっ!」
コノミ、リムを捕まえて、脇をコチョコチョとくすぐる。
リム、身体を捩じらせてメガネを落とす。
コノミ、ようやくメガネを取り戻すと、リムをギュッと抱きしめる。
コノミ 「リム、ごめんね〜。これから怪獣とかが出ていない日は、いっぱい! いっぱい! 遊んであげるからねっ」
リム、コノミに抱き締められて、心なしか嬉しそうである。
抱き締められて照れているのか、体表がホンノリと赤く染まっている。
コノミ 「(ジャアァァという水音に気づいて)……ん?」
コノミ、水音の方向に視線を向けた途端、その表情が一変する。
リム、コノミの表情を見て……怯えたように飛び上がる。
赤くなっていた身体が一気に青ざめて、粒子となって消え失せてしまう。
●司令室
ジョージ、自分が淹れたコーヒーを再度飲んでいる。
ジョージ 「やっぱり、隊長が淹れてくれるコーヒーの味とは違う……だけど、なぜだ……?」
サコミズ、コーヒーを一口飲んでから、味をじっくりと確かめている。
サコミズ 「きっと……『水』だな……」
ジョージ 「(怪訝に)水……?」
サコミズ 「ジョージ、コーヒーを淹れるとき、水道の水を使っただろう?」
ジョージ 「(頷く)……」
サコミズ 「それが、味の違いの原因だよ」
ジョージ 「水が原因、ですか?」
サコミズの言葉に、一同も怪訝そうな表情を浮かべる。
ミライ 「水道の水を使っただけで、こんなにも味の違いが出ちゃうものなんですか?」
サコミズ 「(頷いて)水道の水は、加熱処理をされているからね。味のバランスが崩れてしまっているんだよ。それに、消毒用のカルキの苦味も残ってしまう」
一 同 「へぇ……(感心する)」
ジョージ 「じゃあ、隊長はどんな水を使っているんですか?」
サコミズ 「それはね……」
サコミズが答えようとしたとき、司令室のドアが開いてコノミが入ってくる。
リュウ 「おう、コノミ。メガネは取り返したの……(コノミを見た途端、言葉を失ってしまう)」
コノミの形相、怒りのために般若のように歪んでいる。
マリナ 「(怯えて)ど、どうしたの? コノミちゃん……」
怖気づく一同を、コノミはグルリと見渡す。
コノミ 「誰ですかっ!」
サコミズ 「(ゴクリと唾を飲み込み)誰って……なにが?」
コノミ 「給湯室の水道の水、出しっぱなしにしていた人は誰ですかっ!」
テッペイ 「きゅ、給湯室……?」
マリナ 「わ、私は行ってないわよ?」
ミライ 「ぼ、僕も違います……」
一同、「違う違う」と手を振りながら弁解をする。
そして、彼等の視線は、ある一人の人物に向けられる。
リュウ 「……ジョージ。おまえ、そのコーヒー……どこで淹れてきた?」
ジョージ 「どこって……給湯室だけど……」
ジョージが答えた瞬間、コノミがツカツカと歩み寄ってくる。
コノミ 「ジョージさんですかっ? 水道の水を出しっぱなしにしていたのはっ!」
ジョージ 「(たじろぎながら)か、かもな……で、でも、いいじゃないか……水ぐらい……」
コノミ 「……『水ぐらい』ですって?」
ジョージの一言に、コノミの怒りが爆発する。
コノミ 「いいですか、ジョージさんっ! 世界には水が欲しくても、一滴も飲むこともできない人達もいるんですよっ? そういう人に申し訳ないと思わないんですかっ? 大体……っ!」
コノミ、マシンガンのように、ジョージを攻め立てまくる。
ジョージ、助けてくれと一同を見渡すが……全員、素知らぬフリをする。
コノミ 「ジョージさん、聞いてるんですかっ!」
【効果音・雷の音】
●フェニックスネスト
コノミの怒りに呼応するように、フェニックスネストの上空に雷鳴が鳴り響き、雨が降り始める。
●プール
ジョージ 「はぁ、疲れたぁ……」
ジョージ、プールサイドのベンチにヘタヘタと座り込む。
彼の背後の大窓には、土砂降りの雨が降り続けている。
その隣に座るリュウ、ジョージの疲労困憊とした様子に苦笑する。
リュウ 「ホント、災難だったな……まさか、コノミが怒るとあそこまで恐くなるとはね……」
ジョージ 「(頷き)あれから、3時間も説教が続いたんだぞ? おまえにわかるか? 3時間も怒鳴られ続ける苦痛が……あれは、拷問だよ……(溜息をつく)」
リュウ 「(笑って)普段から大人しいヤツほど、キレると恐いと言うけどな」
ジョージ 「ああ……あの言い伝えは本当だな……」
ジョージ、前方に満々と水を蓄えた、プールの水面を見つめる。
ジョージ 「……けど、水ぐらいであそこまで目くじらを立てることはないと思わないか? そりゃ、うっかりしていた俺が悪かったとは思うけどさ……」
リュウ 「まぁな。でも、コノミは保育園の先生だっただろ? 子供の見本ともなるべき大人が、基本的なモラルを守れないってことが、どうしても許すことができないんじゃないのか?」
ジョージ 「子供の見本、か……」
リュウ 「俺達にそんなつもりはなくても、子供は大人のやってることを真似するもんだからな」
ジョージ 「ふぅん……」
……と、リュウのメモリーディスプレイが鳴り響く。
リュウ 「はい(応じる)」
サコミズ 「《通信》二人とも、司令室に戻ってきてくれないか?」
リュウ 「わかりました(通信を切り)行くぞ」
ジョージ 「……戻るのか?」
リュウ 「当然だろ」
ジョージ 「また、コノミと顔を合わせなくちゃいけないのか……(ガクリとうなだれる)」
●司令室
リュウ達が司令室へ帰ってくると、ミサキ女史が隊長の横に立っている。
ジョージ、チラッとコノミの表情を伺うと、コノミはプイッと視線をそらす。
ジョージ 「まだ怒ってるのか……(シュンと肩を落とす)」
リュウ 「(小声で)おいおい、どうした?」
ジョージ 「初めてだ……」
リュウ 「なにが……?」
ジョージ 「女性に……嫌われたのが……」
リュウ 「(絶句して)……それで、隊長。何か事件スか?」
サコミズ 「あぁ、うん。座って」
サコミズに促され、二人は席に着く。
ミサキ 「まずは、これを見てください」
ミサキ女史、モニターに東京、荒川の映像を映し出す。
荒川、豪雨の影響を受けて増水しており、大きな枝などが押し流されている。
ミライ 「(息を飲んで)凄い……」
マリナ 「これは……荒川ですね?」
ミサキ 「ええ。三時間前から降り出した集中豪雨の影響により、都内各所でこのような河川の氾濫が起きているんです」
リュウ 「まさか、この大雨が怪獣や宇宙人のせいだとでも……?」
ミサキ 「(首を振り)この大雨は、ただの自然現象です。怪獣や宇宙人とは何の関係もありません」
リュウ 「はぁ? 関係ないんスか? なら、GUYSに招集をかける理由はないんじゃ……」
ミサキ 「確かに、通常ならばGUYSクルーを集めることはありません……ですが……」
ミサキ、モニターをニュース映像に切り替える。
雨ガッパを身につけたリポーター、雨粒に打たれながらレポートを続けている。
リポーター「見てくださいっ! この氾濫した荒川の様子を……っ! 今から30分前、この荒川の近くを歩いていた大学生が三名、増水した川の土砂によって、一気に飲み込まれてしまったのですっ! 現在、地元警察や救急隊が懸命の捜索を続けていますが、泥流に飲み込まれた大学生達の姿はまだ見つかっていませんっ!」
ミサキ、モニター映像を切って、一同に向き直る。
ミサキ 「この大学生の捜索をしてほしいと、先程警察から応援要請がありました」
マリナ 「それって、つまり……」
コノミ 「行方不明者の捜索活動をしてくれってことですか?」
ミサキ 「(頷き)そうです」
マリナ 「そんなの、警察やレスキュー隊の仕事でしょう? 私達、GUYSが動くようなことじゃないと思うんですけど……」
テッペイ 「(頷いて)怪獣や宇宙人の捜索というのならわかるんですが……」
リュウ 「ヤプールを倒したとはいえ、俺達も暇を持て余してるわけじゃねぇしな。そんな小さい仕事をいちいち引き受けていたら、俺たちの身体が幾つあったって足りやしねぇ……」
ミライ 「何を言ってるんですかっ!(立ち上がり)僕達、GUYSの任務は、人々の命を守ることじゃないんですかっ?」
リュウ 「(驚き)ミライ……」
ミライ 「(全員を見据えて)怪獣や宇宙人が関与していないとはいえ、人命の重さに変わりはないでしょうっ? 違いますかっ?」
ミライの激しい口調に、リュウ達は言葉を返すことができない。
サコミズ 「ミライの言うとおりだよ。人の命は、みんな平等なんだ。畑違いの仕事とは言え、『助けてくれ』という頼みを無視するわけにはいかない」
一 同 「…………」
サコミズ 「(一同を見渡し)GUYSの名前の正式名称はなんだったかな? リュウ、答えられるか?」
リュウ 「えっと……『Guards for UtilitY Situation』……」
サコミズ 「つまり、日本語に訳すと?」
リュウ 「あらゆる状況のための防衛隊……」
サコミズ 「(頷いて)そう。どれほど困難な状況であっても、どんなに些細な状況であっても、人が一度助けを求めれば、その命を絶対に守る……それが、GUYSの在り方だ」
ミライ 「(頷き)隊長! 僕を捜索に行かせてください!」
サコミズ 「ああ。GUYSの名に恥じないように、しっかり頑張ってこい」
ミライ 「GIGっ!」
サコミズ 「……とは言え、GUYSの規約では単独行動は禁物とされてるからね。誰か一人……ミライと一緒に捜索活動に向かってもらいたいところなんだけど……」
サコミズ、隊員たちの顔をグルリと見渡す。
サコミズ 「(思いついたように)……そういえば、昨日……カレーを食べた人はいるかな?」
唐突な言葉に、一同は「はぁ?」と首を傾げる。
リュウ 「カレー……ですか?」
サコミズ 「(うんと頷いて)この中にカレーを食べた人がいるのなら、手を上げてくれないか?」
ジョージ 「あ、はい……(何だかわからずに手をあげる)」
サコミズ 「それじゃあ、ジョージに行ってもらうことにしよう」
ジョージ 「はぁっ?(キョトンとして)何ですか、その決め方……!」
ジョージ、サコミズに抗議しようとして……偶然、コノミと目を合わせてしまう。
コノミ 「……(ジロッと睨みつける)」
ジョージ 「よ、喜んで行かせていただきますっ! ほ、ほらっ! ミライ、行くぞっ! 早く早くっ!」
ミライ 「え? え? ちょ、ちょっと! ジョージさんっ?」
ジョージ、ミライの背中を押して、司令室から逃げ出すようにして出て行く。
リュウ 「(溜息をついて)……何だかさ、アイツのクールなイメージ、どんどん崩れてきてねぇか?」
マリナ 「確かに……今では、GUYSのギャグキャラよね……」
コノミ以外の一同、呆れたようにジョージを見送る。
●河川敷
雨は完全にやんでしまっている。
雨水でぬかるんだ河川敷の堤防の上を、ミライとジョージが歩いている。
二人の足元には、未だに泥流が流れ続けている。
ミライ 「(怯えたように覗き込み)間近で見ると……本当に凄い迫力ですね……」
ジョージ 「なんだ、ミライ。おまえ、川が氾濫しているところを見たことがないのか?」
ミライ 「はい。故郷には、海や川なんてなかったから……」
ジョージ 「(訝しんで)海や川がない……?」
ミライ 「(慌てて)あ、そ、そのっ! ボク、宇宙暮らしが長かったから……」
ジョージ 「(思い出したように)ああ……そういえば、おまえはスペース・チルドレンだと、ミサキさんが言ってたもんな。海や川を見たことがなくても当然か……」
ジョージ、納得したように頷く。
※ ※ ※
ミライとジョージ、警察やレスキュー隊の一陣と合流する。
レスキュー隊の一人、二人の姿を確認して走りよってくる。
コウヤマ 「御苦労様です。レスキュー隊のリーダーを務めております、コウヤマと言います」
ミライ 「GUYSのヒビノ・ミライです。そして、こちらが……」
ミライ、ジョージをチラッと見る。
コウヤマ、ジョージを見てハッとする。
コウヤマ 「あなたは、確か……スペインリーグの名選手、イカル……」
ジョージ 「(苗字をさえぎって)それで、捜索状況はどうなっているんですか?」
コウヤマ 「あ、は、はい……三人が泥流に飲み込まれてから、2時間以上は経っていると思われます」
ジョージ 「そんなに経過してるんですか……? それって、絶望的じゃ……」
コウヤマ 「用水路で溺れてから4時間以上も経って生還したという例もあるにはありますが……それは、あくまでも様々な偶然が重なった特殊なケースですからね。それに、この川の状況では……とても無事でいられるはずがないと……」
ミライ 「そんな……」
ミライ、絶望のために表情を曇らせる。
コウヤマ 「じつは、今回皆さんをお呼びしたのは、目撃者が奇妙な証言をしているからなんです」
ジョージ 「奇妙な証言……?」
コウヤマ 「ええ。何でも、川の水がまるで生き物のように動いたとか……」
ミライ 「川が動いた? それは、どういうことですか?」
コウヤマ 「わかりません……ただ、怪獣のような鳴き声を聞いたという人もいて……ひょっとしたらと思いまして……」
ジョージ 「怪獣が出現した可能性もあるということですか……」
コウヤマ 「…………(頷く)」
そのとき、コウヤマの無線機がなる。
マツオ 「《無線機》コウヤマリーダー! マツオですっ! 被害者の一人が見つかりましたっ!」
コウヤマ 「なにっ?」
※ ※ ※
ミライ達、ぬかるんだ土の上を走り、マツオのグループと合流する。
マツオ 「あそこに打ち上げられていたんですよ(岸辺を指差す)」
ミライ 「それで、その人は……無事だったんですか?」
マツオ 「(首を振り)残念ですが……」
ミライ 「そう、ですか……(涙を浮かべる)」
マツオ、ブルーシートを被せてある場所へと、コウヤマ達を案内する。
マツオ 「被害者はここに寝かせています。だけど、何だか変なんですよ……」
コウヤマ 「変?」
マツオ 「だって、見てくださいよ(ブルーシートを剥がす)ほら」
遺体を見た瞬間、コウヤマとジョージの表情が驚きに変わる。
ブルーシートに包まれていた遺体は、ミイラ化してしまっている。
コウヤマ 「マツオ。この遺体は、捜索依頼があった学生のもので間違いないのか?」
マツオ 「間違いありません。目撃証言のあった服の色と一致してますし……ほら、ポケットからは学生証も見つかりましたから」
マツオ、学生証をコウヤマに手渡す。
コウヤマ 「(学生証を見て)確かに本人だ……しかし、こんなこと……っ」
ミライたち、干からびた遺体を愕然と見つめる。
●司令室
司令室、ミライからの通信をモニターで受けている。
サコミズ 「発見されたその他の被害者も、体中の水分が抜かれていたと言うんだな?」
ミライ 「《通信》ええ」
マリナ 「なのに、死因は……」
ミライ 「《通信》溺死に間違いないということでした」
リュウ 「(腕を組んで)まったく、不可解な事件だな……」
サコミズ 「目撃者が証言した『生き物のように動く水』というのも気にかかる……ミライ、ジョージと現場に残って調査を続けてくれ」
ミライ 「《通信》GIGっ!」
ミライからの通信が切れると同時に、ミサキ女史が入ってくる。
ミサキ 「荒川の被害者と同様の犠牲者が、別の場所でも発見されました」
テッペイ 「他の場所でも? それで、今度はどこの川で見つかったんですか?」
ミサキ 「川ではありません……高層マンションの一室から見つかったんです」
●高層マンション・一室
男性が顔を洗っていると、水道から流れ落ちる水が青緑色に変色していく。
男性、気がつかずに、その液体を顔にバシャバシャと浴びせる。
液体、男性の顔面にアメーバーのように貼りつく。
男性、目・鼻・口が液体で覆われ、息ができなくなる。
それが合図だったかのか、水道から一気に青緑色の液体が噴出して男性を包み込む。
男 性 「うわぁぁぁぁぁぁー! (干からびていく)」
●美術館
落ち着いた雰囲気のある美術館。
そこの女子トイレに、女性が慌てて入っていく。
●美術館・女子トイレ
女性、パタパタと個室に入って扉を閉める。
そして、下着を脱ごうとしたとき……突然、トイレの水が逆流してくる!
女 性 「え? えぇっ?」
女性、トイレが故障してしまったのかと、逆流した水を覗き込む。
その瞬間、トイレの水が青緑色に変色、女性の身体を飲み込んでしまう。
●一戸建て住宅・バスルーム
若い女性が、鼻歌などを唄いながらシャワーを浴びている。
女性、髪を洗い終わり、シャワーの水を止めようとするが……止まらない!
女 性 「どうして、止まらないのよ……!(コツンと叩く)」
その瞬間、シャワーから青緑色の液体が溢れ出てくる。
女 性 「キャアアアアアーッ!」
●都営プール
都営プール、大勢の人々でにぎわっている。
そのプールの中央部から、青緑色の液体がブクブクと溢れ出てくる。
男 性 「なんだぁ?」
怪訝に思った男性が、青緑色に泡を吹いている場所へと歩み寄る。
その瞬間、男性の指先がミイラのように干からびていく。
男 性 「う、うわぁぁぁーっ!」
男性が逃げ出そうとしたとき、青緑色の液体が一気に襲い掛かってくる。
男性の姿、液体に飲み込まれて見えなくなる。
それを目撃した人々、プールから逃げ出そうとする。
液体、逃げ惑う人々を次々と飲み込んでいく。
●司令室
モニター表示された都内地図に、赤い点が幾つも明滅している。
ミサキ 「この赤い点が、犠牲者が発見されたポイントです。既に100件もの報告が届いています」
コノミ 「そんなに……」
ミサキ 「まだ発見されていない犠牲者を合わせると、その被害件数は更に上がると思われます」
リュウ 「こいつは、ただの自然災害とはワケが違うぞ……」
ミサキ 「ええ。上層部もこれを異常事態として捉え、正式にGUYSの出動を要請しました」
サコミズ 「わかりました」
サコミズ、リュウ達の方へと視線を向ける。
サコミズ 「リュウとマリナは、ガンフェニックスで出動。現場上空から、地上で異常が起きていないか調査してくれ」
リュウ・マリナ「GIGっ!」
リュウとマリナ、ヘルメットを手にして司令室を出て行く。
サコミズ 「テッペイは過去のドキュメントから、似たような事件があったかどうかを検索するんだ。コノミちゃんは、一連の事件に共通点がないかどうかを調べてくれないか」
テッペイ・コノミ 「はい(端末に向き直る)」
●橋の上
ミライとジョージ、事件現場の橋に訪れている。
二人の足元を流れる川は、まだ濁っているとは言え、幾分か穏やかになっている。
ミライ 「この橋を友人達と歩いている最中に、被害者の三人は水に押し流されたそうなんです……」
ジョージ 「その目撃証言が事実なら、どう考えてもおかしいよな?」
ミライ 「ええ。事件当時の記録では、川の水嵩は最大で今より1〜2メートルほど増水していたとのことですが、それでもこの橋の上まで水が届くとは到底思えませんもんね(橋の下を見下ろす)」
川の水、橋よりも4〜5メートルも低い位置を流れている。
ジョージ 「(橋上の標識を見て)仮に届いたとして……この標識だけが無事に残っているというのも不自然だしな……」
ジョージが首をかしげたとき、その頭上で飛行機のジェット音が響く。
二人が顔を上げると、上空にガンフェニックスの姿が見える。
●ガンフェニックス・操縦席
リュウ 「(眼下を見下ろして)別段、変わった様子はねぇよな……」
マリナ 「うん……(レーダーを見て)計器類にも反応はないしね……」
●司令室
サコミズ 「けれど、その周辺で事件が発生し続けていることは確かだ。引き続き、警戒を怠るな」
リュウ・マリナ「《通信》GIG!」
リュウ達の通信が切れると同時に、コノミが顔を上げる。
コノミ 「隊長、事件現場に何か共通点がないかと調べて気づいたことがあるんですが……」
サコミズ 「何だい?」
コノミ 「事件が発生した台所・お風呂場・お手洗い・プール……その全ての場所が、大利根ダムから水を供給してもらってるんですよ」
サコミズ 「大利根ダムから?」
コノミ 「(頷き)そして、荒川も……」
コノミ、モニターに荒川の地図を映し出す。
荒川を上流へと辿ると……その先には、『OOTONE』と表記されたダムの映像がある。
サコミズ 「まさか、このダムから流れ出た水が、荒川や浄水場を通って人々を襲っているということか……?」
コノミ 「私、これは偶然じゃないと思うんです」
サコミズ、コノミの言葉に思案深げな表情を見せる。
●テレビ放送
リポーター「臨時ニュースをお伝えします。都内各所で起きている『人間ミイラ化事件』ですが、GUYSジャパンの調査により、一連の事件は大利根ダムから供給されている水に原因があることが判明しました。これは、供給されている一般家庭の台所・洗面所及びダムの下流に被害が集中していることでも明らかとなったことであり、この報告を受けたGUYS総本部および日本政府は……」
●市街地
市街地では、役所から出動した宣伝カーが周回している。
宣伝カー 「(ピンポンパンポン♪)政府の決定により、この区域の水道の供給は一時的に止められております。また、河川付近には、絶対に近づかないようにお願いいたします。繰り返します……」
宣伝カーが走り去った路地には、地区の掲示板が立っている。
そこへ、スーツ姿の男性が自転車で走ってくる。
男性、慌てた様子で掲示板にポスターを貼り付けて……急いで走り去る。
斜めに貼られたポスターには『臨時断水のお知らせ』とある。
●河川敷
河川敷の近くには、立ち入り禁止の看板が取り付けられている。
大文字で『KEEP OUT』と書かれた黄色いテープも張り巡らされている。
更に、警察などが厳重な警戒態勢を続けている。
●司令室
GUYS一同、司令室に戻ってきている。
マリナ 「都内上空から地上を調査してまわりましたが、不自然なことは何も……」
サコミズ 「ジョージ達はどうだ?」
ジョージ 「はい。事件現場の……」
ジョージが答えようと顔を上げたとき、コノミと再び目が合ってしまう。
ジョージ、コノミにぎこちなく愛想笑いを浮かべるが……またしても、プイッと視線をそらされる。
ジョージ 「……コノミぃ(落ち込む)」
落ち込んで話せなくなったジョージの代わりに、ミライが口を開く。
ミライ 「被害者が倒れていた岸辺……及び、被害者が川に転落したと思われるポイントを調査してみましたが、特に大きな異常というものは見られませんでした」
サコミズ 「そうか……」
マリナ 「結局、全ての事件現場には、同じダムから供給されてる水があるということ以外、何もわからなかったわけね……」
テッペイ 「そうでもありませんよ。過去のデータを調べていたら、今回と似たような事件を見つけることができました」
マリナ 「本当なのっ?」
リュウ 「お手柄じゃんか、テッペイ!」
テッペイ、二カッと笑みをこぼすと、モニターにコスモリキッドの映像を映し出す。
テッペイ 「液体怪獣・コスモリキッド……ドキュメントZATに記録が残る、凶暴な巨大怪獣です」
マリナ 「巨大怪獣?(怪訝な表情を浮かべて)私達、上空からレーダーで調べてたんだけど、そんな巨大怪獣の生命反応は確認できなかったわよ? ねぇ?」
リュウ 「(頷き)そもそも、こんな巨大な怪獣が川底に潜んでいたんなら、レーダーなんか使わなくともすぐにでも見つけられるはずだろうが……」
テッペイ 「それが、コイツは普通の怪獣と少し違うんですよ」
コノミ 「どういうことですか?」
テッペイ 「この怪獣は、普段は液体となって水中に溶け込んでるんです。そして、栄養が不足すると人間に襲いかかる……」
マリナ 「普段は液体って……じゃあ、この怪獣を普通に捉えることは不可能ってことなの? それじゃあ、どうしようもないじゃない!」
テッペイ 「任せてください。僕に良い作戦があります(笑みをこぼす)」
※ ※ ※
テッペイ、モニターの前に立って作戦を話している。
テッペイ 「当時の防衛チーム・ZATは、多摩川に潜むコスモリキッドを実体化させるため、川に高圧電流を流していました」
マリナ 「じゃあ、今回も放電作戦でいくの?」
テッペイ 「いえ、それは難しいと思います」
リュウ 「どうしてだよ?」
テッペイ 「30年前と違い、今回のコスモリキッドの液状細胞は、河川のみならず都内各所に分散してしまっているからです。仮に、一箇所だけに高圧電流を流したところで、コスモリキッドに決定的なダメージを与えるには到らないと思います。ダメージを与えられなければ、コスモリキッドは元の姿には戻りません」
リュウ 「じゃあ、どうするよ? まさか、東京中の水道管や河川の全てに、高圧電流を流すわけにもいかねぇだろ?」
テッペイ 「勿論、そんなことは不可能です。けれども、僕達にはメテオールがある……」
テッペイ、モニターにGUYS対怪獣研究所を映し出す。
ミライ 「ここは……対怪獣研究所ですか?」
テッペイ 「そう。ここで行われていたハーメルン・プロジェクト……この装置を利用するんです」
リュウ 「これって、確か……誘導音波を利用して、怪獣を自在に操ることができる装置だったよな?」
コノミ 「そうか! (パンと手を打って)この装置を使って、都内中に分散しているコスモリキッドの液状細胞を一箇所に集めようというわけですね?」
テッペイ 「そういうことっ(二カッと笑う)」
マリナ 「でも、誘導音波を発生させる音響放射装置は……ケルビムとの戦闘中に破壊されちゃったはずじゃ……」
マリナの一言に、サコミズが気まずそうに咳払いをする。
テッペイ 「確かに、あれほど巨大な音響装置は、今となっては存在しません。だけど、今回操らなくてはならないのは、巨大怪獣ではなく液状化している小さな怪獣細胞です。質量も小さく、エネルギー値が弱い液状細胞であれば、小さな誘導装置でも簡単に操ることができます」
リュウ 「なるほど……っ!」
一同も納得したように顔を見合わせる。
テッペイ 「作戦としては、まずガンフェニックスに音響放射装置を搭載、コスモリキッドの液状細胞を一箇所に集め、合体・融合させるんです」
テッペイ、格納庫にて整備中のガンフェニックスを映し出す。
ガンフェニックスの機体下部には、パラボラアンテナのような音響放射装置が取り付けられている。
テッペイ 「この音響放射装置を使って、都内各地に散らばっているコスモリキッドの液状細胞を一箇所に集め、合体・融合させるんです。しかし、それだけではコスモリキッドを倒すことはできません」
コノミ 「どうしてですか?」
テッペイ 「怪獣の姿に戻っても、その身体は液体で構成されたような状態のままだからです。液体の身体に、ビームやミサイルのような物理攻撃は通用しません」
マリナ 「え? でも、ZATはこの怪獣を倒すことに成功しているのよね?」
テッペイ 「そうです。そのときは、ウルトラマンタロウのフリーザー光線によって氷漬けにされた後、ZATの航空機・スカイホエールの鉄球攻撃によって粉砕されています。だから、今回もその作戦でいこうと思います」
マリナ 「つまり、液体窒素弾で全身をカチンコチンに固めるってこと?」
テッペイ 「御明察っ! 凄いですね、マリナさんっ」
テッペイ、モニターに氷結したコスモリキッドのCGを映し出す。
テッペイ 「液体窒素弾で氷結されたコスモリキッドは、自由に動き回ることができません。そこを一気に叩く……!」
テッペイ、パソコンのマウスを押す。
氷漬けにされたコスモリキッドのCG画像、ガラスのように砕けてしまう。
サコミズ 「(頷き)よし、それでいこう! みんな、すぐに準備を始めてくれ」
一 同 「GIGっ!(飛び出していく)」
司令室には、サコミズ・テッペイ・コノミが残っている。
コノミ 「隊長……私、大利根ダムを調べてきてもいいですか?」
サコミズ 「ダムを……?」
コノミ 「今回の事件は、大利根ダムを起点として発生しています。そして、30年前の事件も調べてみたんですが、その時もやっぱり……(テッペイを見る)」
テッペイ 「(頷き)今回と同様、多摩川の上流から人々を襲いながら都市部へと降りています」
コノミ 「(頷き)これは、絶対に偶然なんかじゃないと思うんです」
サコミズ 「どうして、そう思うんだい?」
コノミ 「(きっぱりと)私の勘です」
サコミズ 「(苦笑して)敵を知ることは勝利への第一歩と言うからね(頷き)わかった。コノミちゃん、上流の調査に向かってくれないか?」
コノミ 「GIGっ!(飛び出していく)」