●ウィンガー側のコクピット
イチノモト、手にスイッチを握っている。
イチノモト「この時がくるのを待っていたのだ!」
リュウ 「いいから早く!」
イチノモト「スイッチナンバー1、ON!」
イチノモト、スイッチを押す。
●山中
ボフッ!
サイレン0057の下部からいきなり煙が吹き出す。
●ローダー側のコクピット
ジョージ 「……なんだありゃ?」
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「煙出てるけど大丈夫なのか!?」
イチノモト「もちろんだ!」
●山中
煙がラキュートを覆い隠し始める。
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「……あれは……?」
イチノモト「敵は猫のようだと聞いたからな。マタタビガスを用意していたのだ!」
●一同
ハァ?という顔。
●山中
そのうちマタタビガスが晴れ始める。
その中からラキュートの姿も見えてくるが……
ラキュート「キュゴホッ、キュゴホッ」
思いっきり咽ている。
●ウィンガー側のコクピット
イチノモト「あれ?おかしいな?」
リュウ 「『おかしいな?』じゃない!」
●ローダー側のコクピット
ジョージ 「おい、そんなこと言ってる場合じゃねえぞ!」
●山中
咽に咽たラキュート、逃げようと反対側を向いて走り始める。
●司令室
テッペイ 「大変だ!このままじゃ町に出てしまう!」
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「くそっ、どうすれば……」
イチノモト「私にもう一度任せろ!」
再びスイッチを握るイチノモト。
リュウ 「いや、アンタはもういい!」
イチノモト「いや……こうなってしまったのも元はと言えば私のせいだ。その責任は取らねばなるまい」
リュウ 「今になって反省するな!」
イチノモト「スイッチナンバー2、ON!」
リュウ 「人の話を聞けー!」
●山中
サイレン0057の下部からポール状のものが出てくる。
●司令室
トリヤマ 「今度はなんじゃ?」
●山中
さらにそのポールの先から棒が伸び、
ポン!
と音がしたかとおもうとその棒からふさふさした毛が出てくる。
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「……あれは」
イチノモト「見て分からんか?猫じゃらしだ」
●ローダー側のコクピット
ジョージ 「誰だあのじいさん連れてきたの……」
●山中
ラキュート「フーッ!」
突如現れた猫じゃらしに警戒するラキュート。
するといきなりシュっとネコパンチを繰り出す!
●ウィンガー側のコクピット
イチノモト「見ろ!ちゃんと気を引くことに成功……」
●山中
ボキッ!!
猫じゃらしが折れてしまう。
さらに折れた猫じゃらしの先が宙をとび、ガンスピーダーに刺さってしまう!
●スピーダーコクピット
ミライ 「うわーっ!」
マリナ 「キャーーー!」
計器が火花をあげる。
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「マリナ!ミライ!」
イチノモト「……正直すまんかった」
リュウ 「言ってる場合じゃない!」
●山中
火を吹いて墜落していくガンスピーダー。
●ウィンガー側のコクピット
イチノモト「ああ、芯棒のしなやかさを計算するのを忘れ取ったわ」
リュウ 「……もう何もしなくてもいいよ……」
イチノモト「……この際一気にやっつけてしまったらどうだ。収集つかんし」
リュウ 「あんた自分で言ってること分かってるのか!?」
●森の中
墜落したスピーダーからなんとか脱出したミライ。
だが、マリナは気絶してしまっている。
ミライ、決心したような顔で手を上げる。
と、腕にメビウスブレスが出現、そのまま空にかざし、
「メビウ〜〜ス!!!!」
●山中
メビウス 「ヘアッ!」
光の中からメビウスが現れる!
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「メビウス!」
●山中
駆け寄り一気にラキュートの前へと出るメビウス。
ラキュート「ニャッ」
が、いきなりでてきたメビウスを警戒し、背中を向け逃げようとするラキュート。
メビウス 「ダッ……」
おい、ちょっと待ってくれという風に追いかけるメビウス。
あっというまに追いつき、ラキュートの前に回りこむ。
と、やはりそれに驚きひっくり返るラキュート。
●司令室
一同、あ〜あ……という表情。
●山中
うろたえるメビウス。
とりあえずラキュートを助け起こす。が、やはり再び逃げていく。
完全に誘導のコースから外れようとする。
●ローダー側のコクピット
ジョージ 「おい、どんどんコースから外れてるぞ!」
●山中
ラキュートの進行方向にある町を見てさらに慌てるメビウス。
メビウス 「ヘアッ!」
一気に大ジャンプ。飛び越してラキュートの前に立ちはだかる。
それに驚き、今度は右に曲がって逃げるラキュート。
●司令室
テッペイ 「ラキュートの進行方向が変わりました!確かこの先には……」
端末を操作するテッペイ。
トリヤマ 「今度は何があるというんじゃ」
テッペイ 「化学工場があります!」
●ウィンガー側のコクピット
イチノモト「一難去ってまた一難だな」
リュウ 「他人事みたいに言うな!」
●山中
ラキュートの進行方向にある化学工場を見てもう一層慌てるメビウス。
メビウス 「ダッ!」
もう一度メビウスが走って前に立ちはだかろうとするが、ラキュートはジグザグに走り始め、中々捕まえることができない。
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「おい!今のうちに何か方法を!」
イチノモト「実はもうひとつ緊急用装備が……」
リュウ 「猫だましとか言うなよ?」
イチノモト、沈黙。
●ローダー側のコクピット
ジョージ 「って、こっちから何かできることは無いのか?」
●ウィンガー側のコクピット
リュウ 「そんなこと言ったって、こんな重たい装備つけたままじゃ何もできねえぞ」
●司令室
トリヤマ 「なんだなんだ、メビウスも何も出来とらんじゃないか!」
マル 「メビウスも怪獣保護には不慣れなんでしょうかねえ……」
サコミズ 「しかし、このままでは……」
考え込むサコミズ。
●山中
カコォン、カコォン、カコォン、カコォン……
そうこうしている間になり始めるカラータイマー。
●ウィンガー側のコクピット
イチノモト「全く。こうなったら致し方がない」
リュウ 「何?」
イチノモト「メビウスが怪獣を押さえつけておいてくれたらわりとスムーズにいくんだが、頼めるか?」
リュウ 「ま、まあ一応……」
イチノモト「じゃあ頼む」
リュウ 「あ、ああ……メビウスー!奴を押さえつけてくれ!」
●山中
リュウの声に反応するメビウス。
メビウス 「ヘアッ」
分かった、という風に力強くうなずき、メビウスブレスに触れ、メビュームスラッシュを発射、ラキュートの足元に炸裂させる。
ラキュート「ンニャァッ!」
急な閃光に驚いたラキュート、足を止める。
駆け寄り、後ろからラキュートを羽交い締めにするメビウス。
そこにガンフェニックスが近寄る。
『サイレン0057』のランプの明滅が激しくなっている。
●ウィンガー側のコクピット
イチノモト「よし、『サイレン』のパワーを最大だ」
リュウ 「……おい」
イチノモト「ん?」
リュウ 「なんで最初からそれをしなかった?」
イチノモト「まあそう怖い顔で見るな。それに、あんまりやりすぎるとコードその他が焼ききれる可能性があったのだ。最後の切り札にとっておいても悪くなかろう。ほれ、ちゃんと前を見んと操縦を誤るぞ」
リュウ、もうやりきれない表情。
●山中
次第に大人しくなってくるラキュート。
メビウスも腕を離す。
フラフラとガンフェニックスの方に向かって歩き始めるラキュート。
●司令室
コノミ 「やった!」
サコミズ 「よし。リュウ、そのまま目的地に向かえ」
●山中
そのままガンフェニックスをおいかけていくラキュート。
メビウス 「ヘアッ!」
メビウスはその後ろ姿を見送ったあと、そのまま空へと飛びあがり帰っていく。
ラキュートもそのうち山からいなくなり、海辺にむかって日が落ちていく。
●怪獣保護区
既に夕方。
何も無い更地の埋立地の中に、山のように土が盛り固められている。
そこから3km四方を、ビーム檻を発生させる機械が並んでおり、そこにガンフェニックスとラキュートが入ってくる。
ガンフェニックスがそのまま埋立地を突っ切ったかと思うと、バリアが発生。ラキュートを閉じ込める。
●怪獣保護区から離れた、GUYS施設内
GUYSメンバーが窓からラキュートを見ている。
リュウ 「……疲れた」
ジョージ 「……お疲れ様」
マリナ 「そんなに凄い人だったの?イチノモト博士って?」
ジョージ 「凄いも何も、なあリュウ?」
ミライ 「でも、博士のおかげでなんとかなったじゃないですか」
リュウ 「ミライ」
ミライ 「はい?」
リュウ 「お前はもっと現実をみる必要があると思うぞ」
ミライ 「現実を……?」
ミライが頭を抱えているところに、テッペイとコノミがやってくる。
コノミ 「お疲れ様です!」
マリナ 「あら、2人とも来たの?」
コノミ 「はい、ずっと基地詰めでしたから……ところで、イチノモト博士は?」
ジョージ 「あの人ならしばらく前にどっかに消えちゃったよ」
コノミ、突然窓を指差して
コノミ 「あ!アレを見てください!」
一同 「何?」
●GUYS埋立地
埋立地の中央にラキュートが座っている……とすぐその上空に、いつのまにか円盤が出現している!
●GUYS施設内
ジョージ 「なんだありゃ!?」
●GUYS埋立地
突然どこからともなく謎の声が響き渡ってくる。
謎の声 『クハハハハハハ。ゴ苦労ダッタナ地球人ヨ。ワタシハぺがっさ星雲第26番惑星なざっし星ノモノダ』
●GUYS施設内
マリナ 「どうやってバリアの中に!?」
ナザッシ星人『地球人ノチンケナ科学ヲ破ルコトナド、我々ノ科学力ヲモッテスレバ容易イコトダ。ソレヨリ、君タチガ必死ニナッテ保護シタらきゅーとハ、実ハ我々ノ侵略兵器ダ』
テッペイ 「なんだって!?」
●街中
帰宅途中の人間が多い市街地。
市民A 「おい、なんか変な声が聞こえないか?」
ナザッシ星人『らきゅーとハコノ星ノ大気ヲ吸引スルコトニヨッテ、体内デ毒がすヲ精製スル。らきゅーとガコノがすヲ放出スレバ、コノ星ヲ約3日デキミタチニトッテ死ノ星トデキルダロウ』
市民B 「どーなってんだ!?」
●司令室
ナザッシ星人『君タチノ持ツイカナル科学力ヲ結集シヨウト、タトエウルトラマンデアロウトコレヲ防グコトハ不可能ダ!我々ハ既ニ地球上ノ生命全テヲ人質ニトッテイル!イマスグ地球ヲ我等ナザッシ星人ニ渡スノダ!』
サコミズが一人いるところに、トリヤマとマル、慌てふためいて司令室に入ってきながら、
トリヤマ 「一体これはどういうことかね!?」
サコミズ 「まんまと一杯やられたようです」
トリヤマ 「まんまと一杯やられたって君ぃ!なんとかできんのかね!?」
サコミズ 「今のうちは、まだ相手の出方を探りましょう。相手の言っていることが本当ならば、こちらはなにも出来ません」
●GUYS施設内
ナザッシ星人『ソレニシテモ馬鹿ナヤツラダ。チョット地球人ノ嗜好ニ合ワセタ特性ヲ持タセタダケデコノ様ダ』
ジョージ 「くそ!よくも!」
リュウ 「チクショウ!何か方法はないのか!?」
コノミ、再び窓を指差して
コノミ 「あ!あれを見てください!」
一 同 「今度は何!?」
●GUYS埋立地
バリア装置近くまでイチノモトが近づいている。
手には拡声器が。
●GUYS施設内
リュウ 「な!あのじいさんどうするつもりだ!?」
●GUYS埋立地
拡声器を口に近づけるイチノモト。
ナザッシ星人『ソンナモノ使ワズトモ聞コエルゾ、地球人ヨ』
イチノモト「こうせんと調子が出てこんのだ」
拡声器のスイッチを入れ、
イチノモト「ナザッシ星人!貴様らの計画は既に阻止されているぞ!」
声を張り上げる。
●GUYS施設内
一 同 「は?」
●GUYS埋立地
ナザッシ星人『ナニ?』
イチノモト「分からないようなら教えてやろう!その怪獣をここへ誘導する途中、ガスを吸わせた!そのガスにどういう作用があるか分かるか!?」
ナザッシ星人『ナンダトイウノダ?』
イチノモト「そいつの体内の毒ガスを中和してしまう作用だ!」
ナザッシ星人『……ホウ?』
●司令室
モニターで送信される一部始終を見ながら、
トリヤマ 「あ、あのじいさん一体なにをやっとるんだ!」
呆気に取られる一同。
●街中
市民C 「オイ……なんかもう一人増えたぞ」
市民D 「一体どうなってるんだ!?」
●GUYS埋立地
イチノモト「キサマらの計画はもう失敗だ!ナザッシ星人、今すぐ地球を立ち去れ!」
さらに声を張り上げる。
●GUYS施設内
ミライ 「あれって確かマタタ……」
慌ててミライの口を押さえるリュウ。
●GUYS埋立地
イチノモト「どうした!早くその怪獣を連れて宇宙に帰れ!」
ナザッシ星人『ヌ……』
その時、円盤から光が漏れて、ラキュートを吸いこんでいく。
ナザッシ星人『今回ハ立チ去ッテヤロウ。ダガ、覚エテオクガイイ。我々ハマタ侵略ニクルゾ!』
ラキュートは完全に円盤に吸いこまれ、それと同時に円盤が消えていく……
●GUYS施設内
リュウ 「帰って……いった?」
ジョージ 「……」
●司令室
呆気に取られた一同。
●街中
市民D 「なんだ?聞こえなくなったぞ?」
市民E 「一体なんだったんだ?」
●GUYS埋立地
イチノモトが一人勝利に酔っているところに、駆け寄ってくるリュウたち。
ミライ 「イチノモト博士!驚きました、あのガスにそんな効果があったなんて!」
イチノモト「ああ?ありゃハッタリだよ」
ミライ 「ハッタリ?」
イチノモト「嘘だよ嘘!それがあちらさん、すっかり信じて帰っちまった。怪獣の管理ぐらい、ちゃんとしてればいいものを」
ジョージ 「こりゃ一本取られたな……」
リュウ 「でも、もしハッタリだとばれたらどうするつもりだったんだ?」
イチノモト「その時はその時だ。今回は正直やりすぎて迷惑のかけっぱなしだったからな。これぐらいはせんと」
腕時計を見て、
イチノモト「さて、そろそろ研究所に帰らねば。サイレン0057の報告書をまとめねばならん。さらばだ諸君」
いきなりそう言って颯爽と埋立地から去っていくイチノモト。
テッペイ 「……結局僕たちって、今回何か役に立ったんでしょうか?」
ジョージ 「……宇宙人に踊らされっぱなしだったしな……」
コノミ 「でも、もしデタラメだって分かったら、あの宇宙人がまた帰ってきちゃうんじゃないですか?」
マリナ 「……そうよね……」
リュウ 「……それなら今度は俺たちが撃退して汚名挽回するぞ!」
ジョージ 「そうとなれば早速フェニックスネストに帰って作戦会議だ!」
テッペイ 「汚名を挽回してどうするんですか、それを言うなら汚名返上……」
空元気ともとれるが、それでもやる気を取り戻したGUYSメンバー、走り去っていく……
既に日も暮れ辺りはだんだん暗くなってゆく……
●宇宙空間
円盤が地球から離れていく。
●円盤内部
暗がりの中でモニターのみがかすかに光を放っており、そのモニターにはラキュートの内部構造のようなものが映し出されている。
そのモニター前では人影が二つ見える。
頭に触覚のようなものが生えているのは分かるが、暗がりのなかで姿は見えない。
ナザッシ星人A「アノ状況デデタラメヲ言ウ地球人ガイルトハ」
ナザッシ星人B「今マデノ調査結果ニハ無カッタコトダ。地球人モ追イ詰メルトドンナ行動ニデルカワカランナ」
ナザッシ星人A「トリアエズ第三次調査及ビ第一次侵略ハ終ワリダ。今マデノでーたヲモッテ一度本星ニ戻リ第二次侵略の計画ヲ練ロウ」
ナザッシ星人B「ソレガ実際ニ開始スルマデニハ、アトドレクライダロウカ」
ナザッシ星人A「オヨソ2千年後グライデハナイカ。マア地球モソノ間ニ変化ガアルダロウガ、地球人ノ基本的性質サエ分カッテイレバ問題ナイ」
ナザッシ星人B「シカシナ。ヤハリ今回ノ内ニ征服シテオイタホウガヨカッタカ」
ナザッシ星人A「マサカ。本当ニアンナオソロシイがすガアルワケデモナイシ……」
●宇宙空間
地球が円盤の後ろへとどんどん追いやられ、そして完全に見えなくなる。
そして円盤が一瞬光ったかと思うと、そこから円盤が消え、後には暗黒の宇宙が残るばかり……
■次回予告■
リュウ 「コノミが怒るとあそこまで恐くなるとはね」
ミサキ 「ただの自然現象です。怪獣や宇宙人とは何の関係もありません」
マツオ 「《無線機》コウヤマリーダー!マツオですっ!」
マリナ 「デマが飛び交ってるみたいなのよ」
リュウ 「こなくそぉぉぉぉーっ!」
マリナ 「たった一匹だけで、東京中が大混乱してるってのに……」
侵奪の水
コノミ 「(腕を支えて)私が、ジョージさんの右手を支えます!」
ご期待下さい。