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第9話万葉集へ戻る
●ファントン星
岩ばかりの荒涼とした大地に、鎧を纏った青い巨人がたたずんでいる。彼の目線より少し下くらいには、塔のように高い岩、その上で飛び跳ねるファントン星人。
青い巨人 「ボガール……それが奴の名……」
青い巨人、怒りと憎しみを込めてつぶやく。拳がギリギリと軋む。
青い巨人 「例を言うぞ、ファントン星人」
ファントン星人「んにゃんにゃ、お気になさんな。それよりあんさんは『ウルトラマン何』ていうだぎゃ?」
青い巨人 「……俺がウルトラマン?」
ファントン星人「あんさん、M78星雲の人でっしゃろ?活躍は聞いてまっせ〜、宇宙の平和を守る正義の……」
青い巨人 「(ファントン星人の言葉をさえぎって)俺は、ウルトラマンなどではない。俺は何も守らない。俺は……怨念に突き動かされるだけの、ただの剣だ」
ファントン星人「つ・る・ぎ……ほえええ」
青い巨人 「さらばだ。二度と再びお前達の前に姿を現すことはないだろう」
ファントン星人「つれないこと言いなさんな。ほな、お達者でな」
青い巨人、大地を蹴って空へ。その姿はたちまち遠く、小さくなって見えなくなる。
ファントン星人「ボガールを追う狩人。白銀の騎士、ハンターナイト・ツルギってか。ひゃー、かっちょええなー」
ファントン星人、踊る。以後、当シナリオ中で青い巨人はツルギと呼称。
●宇宙空間を飛ぶツルギ
ツルギ(M)「アーブの大地から復讐の鎧を授かって以来、俺は宇宙をさすらい続けていた。アーブに悲劇をもたらした、あの忌まわしき高次元捕食体を追って……これは、俺がボガールを追って、地球を訪れる前の物語だ」
●タイトル
勇壮なファンファーレと共にメインタイトル表示。
タイトル切り替わって……
●宇宙空間
飛翔するツルギ。と、前方に黒っぽい大地に黄色い筋の走る惑星がある。
ツルギ、急にビクッ!と痙攣する。
ツルギ 「何だ!?今の感覚は……」
ツルギ、前方の惑星に向かって飛ぶ。
●黒い惑星
整然と整備された、黒いキチン質で建てられ、培養液を湛えたプールのようなもので大地がびっしりと覆われている。が、どこもかしこも破壊され、巨大な獣に噛み千切られたようにえぐられている部分も見える。
ツルギ 「ここは、まさか……」
前方に、管理棟と思しき、銀色をした大小2連のタワーが見える。それに向かって飛ぶツルギ。
●タワー
大きいほうのふもとに降り立つツルギ。もとは同じ高さだったものが、小さいほうは中腹からぽっきり折れてしまったようだ。
あたりを見回しながら慎重に歩くツルギ。
突然放たれる半円状の光線!ナイトビームブレードで切り払うツルギ!
ツルギ 「誰だ!」
??? 「誰だとはご挨拶だな……ウルトラ族よ」
タワーの物陰から現れたのは……身長2mほどの、黒衣を纏った宇宙人。高く隆起した溶岩のような頭部にはところどころに亀裂が入り、肥大して頭蓋骨に収まりきらぬ脳髄が露出している。元からこういう姿のようだが、背中にはタワーの破片と思しき骨質の鋭いかけらがいくつも突き刺さっている。明らかに重傷。
ツルギ 「貴様……!そうか、ここは」
ゼットン星人「正確にはわれわれの3番めの植民惑星だ。宇宙の中でも勢力範囲が狭いわれわれだが、少ないながらも植民惑星を持っているのだよ。その数少ない貴重な星を、よくも滅ぼしてくれたなウルトラ族」
ツルギ 「待て!一体何のことだ!」
ゼットン星人「その青い体……宇宙警備隊員ではないな。なるほど、獰猛な怪獣に星を食い荒らさせるなどという自らの手を汚さぬ狡猾な手口、貴様のようなインテリが思いつきそうなことだ」
ツルギ 「怪獣が星を食い荒らす?もしや、そいつは」
ゼットン星人「問答無用!私の命とともに、貴様の命運も尽きるのだウルトラ族!ここで死んでゆけ!ふはははは……ゼットぉぉぉぉン!」
ゼットン星人、最期の叫びとともにばったりと倒れる。
と、キチン質に覆われた大地がめりめりとひび割れて、そこから銀の角、黒いボディ、グレーの蛇腹の皮膚、顔面や胸部に黄色い発光体を持つ、奇怪な怪獣が姿を現す!1体、2体……3体!
宇宙恐竜ゼットン!以下、登場順にゼットン1、2、3と呼称。
ツルギ 「クッ!これか、さっきの感覚の正体は!」
ツルギ、ビームブレードを振るい、ブレードショットを発射!ゼットン1、それをバリアで防ぐ!
ツルギ 「これならどうだ!」
ツルギ、ナイトブレスを天に掲げ、腕を十字に組んでナイトシュートを発射!ゼットン1、平然と胸で受け止め、腕から自分の光線に変換して発射!
ツルギ 「何ッ!?」
紙一重で回避するツルギ。しかし、背後にいたゼットン2が、反射された光線を再度吸収、ツルギに向けて放つ!
ツルギ、背後からの光線には対応できず、背中にもろに食らってしまう!
ツルギ 「うぉっ!」
地に倒れ伏すツルギ。そこをゼットン3が、横から蹴り転がす!バック転で立ち上がり、距離を置くツルギ。じりじりと後退し、プラントの培養液の中に足を踏み入れる。
じりじりと迫るトリプルゼットン。
ツルギ 「グ……!」
ツルギ、けん制にブレードショットを数発発射。ことごとくバリアに防がれてしまう。
それでも撃ち続けるツルギ。まるで何かを計っているよう。
ゼットンたち、反撃とばかりに顔面から赤色の光線を次々と発射する。
ツルギの周囲に次々と着弾!舞う土煙!上がる爆炎!蒸発する培養液!
ツルギ 「うぉぉぉぉ……!」
舞い上がる土砂と気化した培養液で、ツルギの姿が完全に隠れてしまう。
トリプルゼットン、テレポート。ツルギがいるはずの煙の中に突入する。おぼろげに3体のゼットンの姿だけが見える。
ゼットン1、突然はっとしたように両腕を掲げ、バリアの体制をとる!
ツルギの声「デュアッ!」
電光石火の速さで閃くツルギの、ビームブレードの影!ゼットン1がバリアを張り終わる前にその胸につき立てられるブレード!
ゼットン1、たまらず大爆発!土煙と蒸気が一気に吹き飛ぶ!爆風で吹き飛ばされているゼットン2、3!一見無傷だが、叩きつけられた衝撃で、体内はダメージを受けているようだ。
空中に回避しているツルギ。
ツルギ 「やはりな。いかに生体兵器といえども、視界が限られれば反応も遅くなる。そして!」
急降下し、ブレードを構えたまま低空飛行でゼットン2に突っ込むツルギ。狙われたゼットン2、バリアを張って待ち構える。
ツルギ、ゼットン2に直撃する寸前に足を伸ばして大地を蹴り、反動で宙返り!頭上の覆われていないゼットン2のバリアの中、ゼットン2の背後に飛び込む!
ツルギ 「バリア自体は鉄壁だが、全身を覆われてはいない!」
ゼットン2の背中をブレードで刺し貫くツルギ。もがき苦しむゼットン2。ツルギ、串刺しにしたゼットン2をゼットン3に盾のように向けながら空中へ飛び上がる。
ツルギ 「さぁ、奥の手がまだ残っているはずだ」
ゼットン3、ツルギを見上げると、両腕を大きく広げる。そこに生成される、巨大な火球!
ゼットン3、一鳴きすると、1兆度の火球をツルギめがけて発射!
ツルギ、ゼットン2でその火球を受け止める。串刺しにされたゼットン2、もがきながらも両腕を胸の前にあわせ、火球を吸収し始める。巨大な火球のため、吸収に時間がかかる。
ツルギ 「シュワッ!」
そのまま宇宙に飛び出す。
●黒い惑星、大気圏外
成層圏を越えたあたりで、串刺しのゼットン2は火球の吸収を終える。しかし、ぶるぶると震え、いかにも限界が近づいている様子。
ツルギ 「ンンッ……デュワッ!」
ツルギ、ブレードを引き抜くと、両脚でゼットン2を蹴飛ばす。その勢いでエネルギーを放出するゼットン2!自らのエネルギーに耐えかね、体が崩壊する。
●黒い惑星、地表
天を見上げているゼットン3。増幅された火球エネルギーが迫るのを見て、吸収の体制に入る。
しかし、降り注ぐエネルギーは莫大!吸収の余地なく大地ごとエネルギーに包まれ、分子以下、原子以下、電子以下のレベルまで分解される!
●黒い惑星、大気圏外
黒い惑星が、炎に包まれている。溶解した大地は、気化して宇宙空間まで放出され、核は完全に溶けてマントルと混ざり合い、残った地表も自重でずぶずぶと星の内側に沈みこんでいく。星が、死んでゆく。
ツルギが、崩壊していく星を見つめている。その手が震えている。怒りではない。憎しみではない。恐れに、悔いに震えている。
ツルギ 「俺は……もうウルトラマンではない。ウルトラマンには……戻れない」
ツルギ、きびすを返すと飛び去る。
●キング星
ウルトラマンキングの前に、一人のウルトラ戦士がひざまずいている。カラータイマーを取り囲むようにスターマークが配され、メビウスとエースの中間といった印象の頭部は、ウルトラ族には珍しい野性味を秘めている。
キング 「ご苦労であった。アンドロメダも、ついにジャッカルの脅威から解放されたか」
ウルトラ戦士「はい。それと、ひとつお耳に入れておきたいことが……ゼットンの培養プラントとなっていた星の崩壊についてなのですが」
キング 「鎧を纏った青き同胞が訪れた直後に、星が命を絶たれた話か」
ウルトラ戦士「ご存知でしたか。彼の者がこのままいたずらに己が目的のために行動すれば、更なる悲劇が……」
キング 「同胞を、討つつもりか」
ウルトラ戦士「私は、あの星の最期の声を聞きました。あの星は、その命を歪められながら、それでも懸命に生きていました。命をいたずらに脅かすものに対しては、たとえ何者であろうと容赦はしません」
キング 「……彼の者は、迷い、苦しんでおるのだ。愛を奪われ、憎しみに心を濁らせておる。それを癒し、澄んだ心を取り戻させるのもまた愛」
ウルトラ戦士「……」
キング 「今しばらく、待ってはくれぬか。彼の者が愛を取り戻し、真のウルトラマンとなるときがきっと来る。信じる心のすばらしさは、お主も身に沁みて分かっておろう」
ウルトラ戦士「(頷き)わかりました。待ちましょう。彼の者の心に、光が宿るのを」
●ファントン星
アバンタイトルと同じ場所でファントン星人が跳ねている。
宇宙剣豪ザムシャー参上。
ザムシャー「御免。このあたりで、白銀の鎧を纏った青き体のウルトラ族を見かけはしなかったか」
ファントン星人「ああ、ハンターナイトツルギはんやな、それきっと」
ザムシャー「何ッ!ツルギ、それが彼奴の名か!それでそのツルギとやら、何処に行くと?」
ファントン星人「何やら、仇討ちとかでボガールとかいうえらい食意地はっとるのを追っかけてる言うてはりましたよ。あんさんお知り合い?」
ザムシャー「お手合わせ願いたいのだ。何しろ彼奴は、ゼットン3体を1人で斬って捨てたという噂だ」
ファントン星人「うっひゃー、そらまた偉いことでんな」
ザムシャー「そうであろう。で、そ奴は何処の方角へ」
ファントン星人「あっち」
ザムシャー「左様か!恩に着るぞファントン星人!」
ファントン星人「お気にしなさんな。また寄ってきんしゃい。お土産楽しみにしてまっせ」
ザムシャー「うむ、では先を急ぐので、御免!」
●地球へ向かうツルギ
エンディングテーマのイントロが流れ始める。
ツルギ(M)「俺は、数え切れないほどの過ちを犯してきた。だがそんな俺を、地球は受け入れ、仲間だと認めてくれた。俺に、新たな愛を与えてくれたのだ。しかし、それについて語るのは、またの機会にしよう。俺は、心を閉ざして過酷な戦いをまだしばらくの間続けることになったのだから」
●エンドロール
ハンターナイト・ツルギ
ファントン星人
ゼットン星人
ウルトラマンキング
ウルトラ戦士
脚本/ゆうた人