戻る
<CM>
●教室(幻影?)
授業中。黒板には数学の数式が細々と書き込まれて、教室内には退屈そうな、眠たげな雰囲気が漂っている。
ノートに向かっているヒロキ。懸命に書いては、書き間違えて消しゴムで消している。
ことん。
やや距離を置いた位置から、何やら物音が。
斜め左前の席の女子生徒「マスミ」が、消しゴムを落としたのだ。
ころころころ……
気がついたヒロキ、不規則に転がってくる消しゴムを目で追い、自分の足元に来たのでそっと拾い上げる。
顔を上げる。
と、マスミの、意外にも迷惑そうな顔。
ヒロキ 「(授業中なので小声で)これ……」
マスミ 「(顔をしかめて)あ、あぁ……」
少し距離があるので、うんと腕を伸ばすヒロキ。
マスミの方は、それほど受け取るのに努力している様子はない。
ヒロキの手がマスミの手に触れる。
明らかに嫌がっているマスミ。ぱっ!と手を引く。
がたっ!
勢いがよすぎて、マスミの椅子が音を立てる。
数学教師「こらあ!そこ、何やっとるか!」
物音を聞きつけて、歩み寄ってくる教師。
マスミの渋面、最高潮に。
ケンジ 「お前ら、付き合ってんじゃねぇの!?(嘲笑)」
マスミ 「……!」
冷やかすような笑いが教室に広がる。マスミ、ヒロキを睨み付ける。
ヒロキ 「(モノローグ)どうして……」
画面が一旦暗転。
今度は、ホームルーム。教卓に立っているのは、星先生。
みんながわいわい、がやがやと歩き回っている。
黒板には「修学旅行」「班決め」などの文字が。
星 「男子は22人、女子は14人だから、7人ずつグループを作るのよ!男子は一班だけ8人にしてね、いい!?」
ぽつんとたたずんでしまっているヒロキ。
周囲は、それぞれ仲のいい友達同士が集まって、既に男子3班、女子2班のグループが出来上がりつつある。
女子A 「ごめん、私たち8人になっちゃった」
女子B 「いいよ、青山さんこっちにおいでよ。これで7人ずつね」
イメージ的に、周囲が暗くなっていき、ヒロキ独りがスポットライトに照らされたようになる。周囲の楽しげな声も、エコーがかかって聞き取りにくくなる。
ヒロキ 「(モノローグ)先生が、決めてくれてればよかったのに……」
画面が徐々に、明るさを失っていく。
星先生の声「ヒロキ君を入れてあげて、ね」
男子Aの声「別にいいけどさ、うっぜぇなぁ」
男子Bの声「いいじゃん、いてもいなくても同じような奴なんだからさ……」
完全に暗転。
●暗闇
闇の中にいるのは、ヒロキとメフィラス星人のみ。
メフィラス「地球人類はあまりに野蛮だ。君の人格を正当に評価していない。このままでは地球人は平和に暮らせまい」
ヒロキ 「なんで、なんで……(泣いている)」
メフィラス「辛かっただろうね。私たちメフィラス星人に地球を任せてくれさえすれば、私たちはこんな辛い思いはさせない。メフィラスの星の元、人類は皆、平等だ。どうだねヒロキ。地球を私たちに任せてくれないか。『第35メフィラス星人』として、楽しく生きて行こうじゃないか」
ヒロキ、考え込む。沈鬱……
●宇宙船内
矢 的 「ヒロキ、いけない、その言葉を言ってはいけない!君は、君は、地球人だ!」
身動きが取れない矢的、叫びながら身悶える。
メフィラス「ふふふ、そうだ、よく考えなさい。君を救ってくれるのは何なのか」
ヒロキの声「(モニタの中から)僕、地球をあなたに……」
●草原
画面中央に、昭和41年に現れたときとほぼ同じ形のメフィラス円盤が鎮座している。
メフィラスの声「ははははははは!(哄笑)」
矢的の声 「ヒロキ!!!!!」
画面、暗転。
●東京
東京タワーを臨む都会のど真ん中。
空中に稲妻が走り、瞬間移動で巨大な影が出現する!
真っ黒な巨体、四足で鎧のような硬い皮膚をまとい、頭には巨大な、銀色の角を生やしたそれは、「メフィラス星獣」。
どっすぅん!
角を除いても体長50メートルはあろうかという巨体が、建造物をなぎ倒しながら着陸する。
「ぎぇあああああああ!」
一声咆哮!
モブシーン。
瓦礫が崩れ落ちる中、頭を抱えるようにして避難する人々。
しかし……
怪獣は、吼えて以降、特に何もするではなく、そこに立ちすくんでいる。
●CREW GUYSフェニックスネスト全景
●作戦室
コノミ 「東京FA地区に怪獣出現!」
テッペイ 「過去のアーカイブへ照会……データ無し!初めて出現する怪獣です」
トリヤマ 「(作戦室に帰ってきている)あああああ、何であんなものが!みんなはどこに行っておるんだどこに!」
マ ル 「さっき補佐官が連絡した失踪事件の調査をやってるんですよ!」
サコミズ 「ジョージ!マリナ」
作戦室に、2分割画面のモニタが現れる。
ジョージ・マリナ「(画面から通信音声)はいっ!」
サコミズ 「そちらの位置はモニタしている。すぐにFA地区に向かってくれ。目印は東京タワーだよ」
ジョージ・マリナ「G.I.G!」
画面が消える。
サコミズ 「リュウ、ミライ。先生と中学生は見つかったか」
画面、改めて出現し、今度はリュウが大写しに。
リュウ 「(通信音声)まだだ、手がかりが何もねぇんだから探しようが」
ミライ 「(画面に割り込んで)怪獣ですかっ!?」
コノミ 「怪獣出現時に生じた空間の歪みですけど、ミュージアムに生じたものとよく似ていることが解りました!」
画面に、ブラックホールを表す様なワイヤーパターンが表示される。
テッペイ 「なるほど、波形がそっくりだ」
トリヤマ 「どういうことかね」
ミサキ 「黒幕は、同じということですね。」
リュウ 「(通信音声)よぉしっ!怪獣のところに行ってみる!」
サコミズ 「うむ、ただ人々の避難誘導を最優先するんだよ」
ミライ 「(通信音声、今回もリュウの画面に割り込んで)G.I.G!」
●東京
遠景に東京タワー、その手前にたたずむ怪獣が見える道を突っ走る、GUYS専用車両。
更にその上空を、2機の戦闘機が飛行するパノラミックな映像。
●東京タワー上空
ガンローダー、ガンウィンガーが怪獣の眼前に到着。
カットイン・ガンウィンガーのコックピット
ジョージ 「よし、とっとと片付けてやる!ウィングレット・ブラスター!」
ガンウィンガーが熱光線砲を発射する。じっとしていた怪獣、頭部を動かし角を光線の方に向ける。角はまるで鏡のようにつやがあり、光線をはじき返してしまう。
その光線が、ガンローダーの方に。
カットイン・ガンローダーのコックピット
マリナ 「ちょっと!気をつけなさいよ!」
カットイン・ガンウィンガーのコックピット
ジョージ 「狙ったわけじゃねぇよ!」
●作戦室
テッペイ 「あの角は、ミラーコーティングが施されています。光線兵器は跳ね返されてしまいます、ジョージさん!」
●東京タワー上空
ガンウィンガーを追い越すように、前面に出てくるガンローダー。
カットイン、そのコックピット
マリナ 「それじゃ私がやってやるわ!」
ガンローダーのダブルガンランチャーからミサイルが発射される!
糸を引くように爆煙を引いて、怪獣に向かうミサイル群。
怪獣、今度は身をかがめる。ミサイルを全て、背中で受ける。
ずがああああぁんっ!
物凄い爆炎が吹き上がる。
カットイン・ガンローダーのコックピット
マリナ 「どんなもんよ!……えっ!何っ!?」
煙が晴れていくと……全く何もダメージを受けていない怪獣が現れる。
●作戦室
トリヤマ 「まぁーったく平気ではないかマル!どうすればいいんだ!」
マ ル 「私に聞いたって無理ですよ」
トリヤマ 「あんなのに通用する武器って、武器、武器……」
●東京・地上
瓦礫の中、GUYS特殊車両が走りこんでくる。
飛び出してくるリュウ、やや遅れてミライが降車。
見上げる。
ミライ 「何て硬さなんだ」
リュウ 「何やってやがんだ!メテオールで、スペシウム弾頭弾でふっ飛ばしちまえ!」
●ガンウィンガー・コックピット
ジョージ 「おうよ!隊長、メテオールを」
サコミズ 「(通信音声)待て、攻撃中止だ」
ジョージ 「えっ!」
●作戦室
コノミ 「全ての通信回線に割り込んできてます、地上波、衛星放送、有線放送にまで!」
サコミズ 「スクリーンに出して」
コノミ 「はい!」
スクリーンに通信画像が表示される。最初は砂嵐に人影らしきものが写っている状態だったが、徐々にはっきりしてくる。
映し出されたのは、
テッペイ 「これは、悪質宇宙人・メフィラス星人だ!」
トリヤマ 「メフィラス!?何者だぁそりゃぁ」
テッペイ 「ドキュメントSSSPとドキュメントZATに一回ずつ記録があります。初回は、ウルトラマンと対戦して引き分けた強豪です」
トリヤマ 「こりゃまたとんでもない奴が……」
サコミズ 「とんでもないのはきっと、これからです……」
笑顔が消えているサコミズ。
●通信画面
メフィラス「私はメフィラス母星の全権大使、ヨモツ・フィラス。地球人類に通告する。地球人類代表により、この星は本日より『第35メフィラス星』と改称し、我々メフィラス星人の統治下に入る。今後、地球上の各国家はその組織をすべて解体し、まもなく宇宙船団により飛来するメフィラス統治部隊にその全権を明け渡すこと。当然、武装は解除してもらいたい」
●特殊車両
両脇から顔を突っ込んで、通常の自動車ならカーオーディオが付いている場所に設置されている通信機を覗き込み、メフィラスの通信を聞いているリュウとミライ。
リュウ 「んだとぉ!」
ミライ 「言ってしまったのか、あの言葉を」
●作戦室
テッペイ 「武力じゃなくて、政治的に侵略してくるなんて、そんな」
サコミズ 「総監代行……」
ミサキ 「(通信機を置く)連絡が付きました。GUYS各部門の代表が、GUYSホットラインを用いて緊急会議に入りました」
●ヴァーチャル画面
真っ暗な中に、天井からスポットライトの光が複数降ってくる。それがホログラムを投影し、顔ははっきり見えないが、数人の人物の姿が現れる(全て立体映像)。
その声は各国の言葉で話されているのだが、同時通訳で日本語がかぶって聞こえる。
A 「前代未聞の事態だが……」
B 「当然、地球の統治権のメフィラス星人への移譲なんてことは」
C 「ありえるわけがない!誰が、何の権限で」
D 「地球人の代表とは何者なんだ」
メフィラスの声「教えて差し上げようか」
会議場が騒然となる!
A 「バカな!このホットラインにも侵入を許しているのか!」
会議室の真ん中に、メフィラス星人が現れる。
メフィラス「君たち地球人類の代表とは、彼だ」
メフィラスの立体映像の隣に、メフィラスに肩を抱かれるようにしておどおどと現れたのは、ヒロキ。
B 「(一瞬、鼻で笑って)馬鹿馬鹿しい。そんな子供に星全体の統治権を左右する権限を持たせる社会など、あるものか!メフィラス星人!」
メフィラス「先ほどから聞かせていただいているがね。メフィラス星全権大使として正式に名乗った私を、一度も名前で呼ぼうとしない、我々の固体認識すら出来ない低級な文明に対しては、我々としても同様に対処させていただいているだけだ。我々にとっては、君たちGUYSの最高幹部も、ここにいるヒロキ君も同じ地球人にしか見えないが、いかがかな」
黙り込んでしまう一同。
メフィラス「現在、我々は日本と呼ばれる国家の領土に存在している。別に逃げも隠れもしないから勝手に逆探知してくれればよい。首都に出現させた生物は、我々の地球統治宣言の象徴だ。象徴だから、特に何も行うわけではないから安心し給え。ただし、我々メフィラスの人民やあの生物自身に危害を加えようという活動が確認できた場合、容赦ない反撃並びに破壊活動に移る。慎重に協議し給え。はははははははは!」
姿を消すメフィラスの映像。
●東京
着陸してくるガンウィンガー、ガンローダー。
●地上
合流する、リュウ・ミライ・ジョージ・マリナの4人。
リュウ 「何てことだ。敵と大して戦いもしないで、地球を明け渡すのかよ!」
ジョージ 「あんな子供の言ったことに縛られることないだろう!やっちまおうぜ」
マリナ 「待って!隊長の攻撃命令が出てな……」
リュウ 「そんな悠長なこと!」
ミライ 「……待ってください」
振り返る3人。
ミライ 「メフィラス星人が言うように、彼だって地球人なんです。他の惑星の人が外交の代表に選んだからといって、宇宙国際法的に大きな問題にはならない」
リュウ 「ミライてめぇ、メフィラスの肩を持つ気か」
ミライ 「故意に幼い個人を狙ったという問題はありますが、……地球人自身の意思がある以上、宇宙警備隊としては(唇を噛む)手を出せません」
マリナ 「じゃ、どうすればいいって言うの?」
ミライ 「一つは、ヒロキ君を救出し、あの発言が自分の意志ではないと証明すること。または、発言を撤回してもらうことです。そうなればメフィラス星人の行為は明らかな侵略ですので、攻撃を行うことが出来ます」
リュウ 「かなり、難しいんじゃないのか」
ミライ 「はい……しかし、一つだけ、希望があります」
ジョージ 「アミーゴ、希望って何だ」
ミライ 「あの場に、『ウルトラマン』がいることです」
●メフィラス宇宙船
メフィラス星人、ヨモツ・フィラスに肩を抱かれているヒロキ。
メフィラス「さぁ、ヒロキ君。これまで君の上に君臨していた教師とも、君は今日から平等だ。そんなに怯えることはない」
ヒロキ、矢的を見る。
ヒロキ 「先生、僕、怖かったんだ。寂しかったんだ。この人とだったら、そんな思いしなくてすむと思って」
ヒロキ、怒られるかとびくびく。
矢 的 「ヒロキ!……すまなかった」
ヒロキ 「えっ!?」
ヒロキ、意外。
矢 的 「校長として、君がクラスで辛い思いをしていることを感じ取ってあげられなかった。学校には色んな生徒がいるね。君だって誰とでも仲良くできるわけじゃない。まだ若い中学生だ、人との付き合い方だって成熟していない。そこを助けてあげるのが、私たち教師の務めだったはずだ。その責務を果たせなかった。この通り、謝る。すまなかった!」
矢的、縛られた不自由な体勢で、頭を下げる。
メフィラス「負けを認めたな。君に出来なかったことは今後、メフィラス政府が補っていく。安心するがいい(嘲笑)」
ヒロキ 「先生……」
矢 的 「でもな!忘れてはいけない!君は、地球人なんだ!決してメフィラス星人ではない!君は君だ、ヒロキだ!ケンジでも、ダイスケでも、誰でもない。誰にも劣っていないし、メフィラス星人に頼らなくても、明日は君たちを平等に待っている!明日はいいことがきっとあるよ!だから、胸を張れヒロキ!地球人として!メフィラスの軍門に下ってはいけない!」
メフィラス「黙れ!既にこの星は我々のものだ!」
矢 的 「ヒロキ!考え直し……」
矢的の声を掻き消すように、メフィラス宇宙船に警報が鳴り響く。
ヨモツ・フィラス、メカニズムを捜査し、モニタを確認して、
メフィラス「ははははは!何と愚かな。見るがいい!」
メフィラス、空中にモニタを表示させる。矢的、驚愕し、のち、唇を噛み締める。
巨大なミサイルが写っている……
●フェニックスネスト作戦室
コノミ 「大変です!東京の怪獣に向けて、GUYSスペーシーの防御衛星からスパイナー弾頭ミサイルが発射されました!」
作戦室に緊張感が走る!
テッペイ 「スパイナーだって!?あの水爆並みの破壊力を持つという……」
ミサキ 「あれは各国GUYSの補佐官レベル以上の幹部の要請がなければ投下されないはずです」
室内全員の目が、トリヤマに集中する……
トリヤマ 「あ……私がそんなこと、するわけが……」
マ ル 「あのぅ、補佐官。さっき、何か言ってませんでしたっけ」
●回想
怪獣が、光線やミサイルを受けても全くダメージを受けないため、うろたえるトリヤマ補佐官。
トリヤマ 「武器、武器、武器……」
通信機に向かって、
トリヤマ 「あー、トリヤマだが、うん、そう、何か手はないのかねそっちでは。すぱ、スパイ?何でもいい、怪獣をやっつけられるんならやってくれ!」
●作戦室
トリヤマ 「あ、あの時のが、い、今頃……」
一 同 「ほーさーかぁーんっ!」
●メフィラス宇宙船
矢 的 「何と言うこと……」
ヒロキ、完全に恐怖に戦いている。
メフィラス「さぁこれで、我々に対する攻撃が確認できたわけだ。宣言した通り、自衛のための反撃をさせてもらう。全面戦争も覚悟しておくのだな!」
ヨモツ・フィラス、ばっと手を掲げる!
●東京
GUYSの面々が見上げる中、メフィラス星獣が大音声を上げ、行動開始!
角でビルディングを一つ叩き崩し、目から発する青い光線が東京タワーの展望台を破壊!
ゆっくりと倒壊していく東京タワー!
<CM>
NEXT