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明日へ〜後書きに寄せて



 火星周辺宙域で行われた「グランスフィア」との”太陽系決戦”は、一時は太陽系惑星の大半を失う状況まで追い込まれ、地球の命運もこれまでかと思われた。だが【SUPER-GUTS】と【ウルトラマンダイナ】による捨て身の協力作戦によってグランスフィアは撃退され、一度は疑似ブラックホールに飲み込まれた惑星達も奇跡的に元に戻った。人類を襲った二度目の大異変は、ここにひとまずの閉幕を見たと言えよう。しかしその結末は、またしても【ウルトラマンダイナ】の疑似ブラックホールへの「消失」という大いなる損失とひきかえであった。このことは一体何を意味するのだろう?
 人類が人類である以上、前に進まなければならない、と誰かが言う。宇宙への移民計画はもう引き返せない段階へと到達しつつある。生きている限り我々は「明日」を模索せねばならない。だが、その「明日」が明るいものであるという保証はどこにもない。二度に渡って身を挺し我々を護ってくれた巨人達に応えるためにも、我々は自戒し学習して、更なる高みへ昇らなければならない。かつてサワイ・ソウイチロウが語ったように、いつかどこかの宇宙で”彼ら”に出会ったときに、胸を張って「ありがとう」と言えるように。そう、少なくとも再び”彼ら”に遭遇したとき、他の生命体を護るために”彼ら”によって排除される存在にだけは、決してなってはならない。
 折しも今年は【ウルトラマン】の最初の出現より20周年に当たり、同時に新たなる未来への力となる組織【NEO-SUPER-GUTS】のお披露目の年となった。これを記念して現TPC航空司令部【ダイブハンガー】広報部管轄公開記録館が、記念式典&特別展示を行う予定であることは周知の事実である。【ウルトラマン】が、【TPC】が、そして我々人類が、何を闘ってきたのか、何を失い何を得たのか、どこへ行くべきか、どこへ行くべきでないかを改めて考える良い機会となろう。



 と、綺麗にまとめようと思ったところに、【TPC】広報部よりちょっとしたスクープが送られてきた。以下その概要を紹介しよう。



ザ・ウイングス・オブ・ライツ

TPC航空司令部ダイブハンガー公開記録館主催
”光の巨人”光臨20周年/NEO-SUPER-GUTS結成記念特別展示
「明日へ 〜指し示す光、進むべき道〜」の公開初日式典において、
特別編成アクロバットチームによる飛行展示が行われることが決定しました。


式典限定特別編成アクロバットチーム

”ザ・ウイングス・オブ・ライツ”

一番機パイロット:"Deimos" (ディモス) 女性
二番機パイロット:"Phobos" (フォボス) 男性
三番機パイロット:"Slider" (スライダー) 女性
四番機パイロット:"Straight" (ストレート) 男性

搭乗機体:GW-01Z 最終生産型特別塗装仕様

機体整備:元カシムラ・チーム再集結メンバー

二つの闇の時代を戦い抜いたあの名機が、元祖開発陣の手によって甦ります。
あやつるは四人の素性不明のベテランパイロット。
しかもこの式典のためだけに編成され、式典終了と同時に解散するという
特別限定スーパーチームです!
彼らは一体何者なのか!?どんな演技を見せてくれるのか!?
式典当日を大いに盛り上げるべく鋭意準備中です。乞うご期待!



 ……なんともはやサービス精神旺盛な話である。かのガッツウイング1号が元開発陣自身の手で甦るだけでも注目だし、特別塗装の機体はご覧の通り明らかに二体の【ウルトラマン】をイメージしており、否が応でも期待が高まるというものだ。
 が、少々奇妙な点がある。肝心の四人の「ベテランパイロット」に関して、コードネームとおぼしき呼称と性別以外は何一つ明かされていないのだ。
 早速広報部に問い合わせてみたのだが、パイロット四名のプロフィールに関しては、配付資料以上の情報は一切公開しない方針だという。これはいったいどういうケレン味か。順当に考えれば【GUTS】もしくは【SUPER-GUTS】の元パイロットと考えるのが妥当だが……その正体はいずれ公式にせよ非公式にせよ何らかの情報が流れるであろうとして、ともかくも今は式典当日の彼らの飛行演技に期待するとしよう。
 興味を持たれた方は是非当日の房総沖へ。当然我々も参上するつもりである。






 我々記者達が【TPC】、そして【GUTS】とその意志を継ぐ者達の足跡を追い続けて、どれほどの年月が経っただろうか。最初は青臭い「報道の使命感」と「体制への反発心」から始めたことだったように記憶しているが、年月を経る内にいつの間にか、押し寄せる理不尽な試練に敢然と立ち向かう彼らの姿にすっかり魅了され、挙げ句に一部の隊員達と個人的交流まで持つに至ってしまった。その分職業報道人としての客観性は失われた面も否めないが、個人としては充実した人生であったと確かに振り返ることの出来る今、そのことを敢えて後悔はすまい。とはいうものの、今回は一連の歴史の中でも「ライドメカ」と呼ばれる航空宇宙機の変遷に的を絞った記事であるため、とりわけ客観性には充分配慮したつもりではある。
 事の始まりは遡ること二年前の酒飲み話であった。行きつけのジャズバーで久しぶりに再会した先輩と後輩が、二人の過去の取材資料を集めて一つにすればちょっとした特集記事にでもなるのではないか、などと呑んだくれながら話したことが発端である。当初は手持ちの具材の二度出し汁でボーナス気分の臨時収入にでもなれば、という程度の気持ちだった。だったはずなのであるが、己を振り返れば過去の資料の整理に手を付けた途端にすっかり夢中になり、周囲を見渡せばいつのまにやら迎えようとしてた「ウルトラマンティガ出現20周年」への機運に取り込まれ、二人とも歳を忘れる勢いで走り続けた結果、ここで読者諸氏のお目に触れさせて頂いている次第である。引退間近の先輩の最後の一花、そして一報道機関のトップに躍り出た後輩のセレモニーとしては、まずまずな所と自画自賛させて頂こう。

 西暦2027年現在、巨大怪獣の出現は減少傾向にあり、外宇宙や異世界からの来訪者も今の所は一段落したように見える。しかし過去に”大異変”は確かに起こり、未来は誰の目にも見えはしない。そしてこの記事が読者諸氏の目に触れる頃には、その見えない未来を護るための新たなる防衛組織、【NEO-SUPER-GUTS】の全貌が明らかになっていることであろう。
 もしも大異変が二度と起こらぬなら、その事を祝福しつつ、この記事が勇敢なる者達の活躍を後に伝える記録の一部となることを望もう。
 もしも大異変が再び人類を襲うなら、この記事が少しでも未来への、何らかの参考指標になれば幸いである。

 最後にこの場を借りて、我々の時を選ばぬ来襲をとがめることもなく、書き切れぬほどの貴重なお話しを聴かせて下さった元カシムラ・チーム開発員 T・J・イアン氏と、ぶしつけな取材にも笑顔を絶やさず、TPCライブラリに残る公開可能な記録の数々を惜しみなく提供して下さったTPC広報部長ルー・ヴァーランド氏に、心よりの謝辞を。



オノダ・タケヒコ
ハスミ・カオル
2027年9月7日







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