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ネオ・フロンティア
TPC2010 SUPER-GUTS ZERO
○G-EAGLE
 ・alpha
 ・beta
 ・gamma
 ・alpha-superior
●GW-01M
●GW-01Z
●GW-01QS
○GW-R




新たなる時代へ


 ”ユザレの預言”より始まった人類の試練は、2011年ニュージーランド沖に浮上した超古代遺跡「ルルイエ」にて一つの決着を見た。この大異変の元凶であったと推測される超古代怪獣”邪神”「ガタノゾーア」に【ウルトラマンティガ】と【GUTS】が協力して立ち向かい、これに勝利したのである。だがそれは、最後まで人類を護るために闘い通した【ウルトラマンティガ】の「消滅」という大きな損失とひきかえでもあった*23
 その後地球に長い平和が訪れたという訳でもなかった。「誘発要因」としての”闇”を撃滅したことが影響したのか、確かに発生件数は激減し規模も小さくなったものの、異変は形を変えて起こり続けていた。人類は未だ闘い続けなければならず、人類にとって一つだけ明らかなことは「もう【ウルトラマンティガ】は現れない」という残酷な現実だけであった。
 この状況を逆手に取り「好機」としたサワイ・ソウイチロウTPC総監(当時)は、確かに非凡であったと言えよう。「大いなる守護神」は失ったが、大規模かつ継続的な大異変も去った今こそ、一度は絶望を乗り越えた人類に生きる自信を取り戻させ、次のステージへ進む絶好の機会だと考えたのだ。
「我々はあの恐ろしい闇に打ち勝ち、大きな自信と不屈の闘志、そして何よりも明日への希望を得たはずだ。我々を護ってくれた”光の巨人”に応えるためにも、我々自身を護りうる力と、いかなる試練にも負けない強い心を持って、これから生まれてくる命達の未来のために歩き出さなければならない。闇が来るまでもなく地球は爆発寸前だった。ならば飛び立とう。母なる星を護るために。子供達の未来のために。そしていつか銀河のどこかであの”光の巨人”の仲間達と出会ったときに、恥じることなく胸を張って、『ありがとう、我々はこんなに立派になれた』と言えるように」
 2010年末に世界へ発信された、後に「サワイ新時代宣言」と呼ばれるこの発言の要点は三つ。「大異変後の世界の復興」「自衛力の強化」「本格的宇宙開発の推進」である。度重なる怪獣・宇宙人災害により破壊された地球市民の生活環境復旧は当然最優先であるし、【ウルトラマンティガ】なき後の減ったとはいえ撲滅はされていない怪獣災害への対処も必須であり、人口飽和問題解決と人類に希望を持たせるための宇宙進出は不可欠であった。かねてよりサワイが夢見ていた「宇宙開発構想」は、地球防衛、ひいては太陽系防衛という壮大な側面を加えて動き出すこととなった。後に言う「ネオ・フロンティア計画」の始まりである。
 2011年から2016年にかけての【TPC】の宇宙開発における業績は、特筆すべきものがある。太陽系有人探査、火星移住試験、各惑星・衛星などへの基地増設、ニューマキシマを元に惑星間航行を短時間で可能にし将来的には恒星間航行を目指す「ネオ・マキシマ・ドライブ」の開発、そして未来の大量移住を前提とした火星テラフォーミングの開始。正に宇宙時代といった様相である。
 だがこの時期は同時に「軍備増強」の時代でもあった。この時期【TPC】警務局が積極的に新兵器類の開発に力を入れた。終わらぬ怪獣災害もそうだが、過去の記録は地球に対して侵略的・攻撃的姿勢で接近してくる異星人が決して少なくないことを証明しており、人類の宇宙進出がそういった存在を刺激する可能性がある以上、防衛力の増強は必然でもあった*24
 こうした時代の中で、【GUTS】も新たな姿へ生まれ変わろうとしていた。2012年、日本山中に新たな【TPC】総合本部、通称「グランドーム」*25の建設が開始され、巨人なき後の地球防衛組織の再編成が始まった。2013年にサワイが病気療養のため総監職を辞任*26し、彼の信奉者の一人であったフカミ・コウキが新総監に就任、彼のもとで新時代のための【GUTS】再編成が検討された。
 【TPC】パイロット養成機関【ZERO】の教官であったヒビキ・ゴウスケを中心とした、新しい対怪獣・異星人・怪現象対応チーム Super Global Unlimited Task Squad =【SUPER-GUTS】が発足されたのは、2014年のことである。






”スフィア大戦”


 2017年、無数の球状飛行物体が地球衛星軌道及び火星において敵対的行動を始めたことから、新たな”大異変”は始まった。「スフィア」のコードネームを与えられた謎の敵性知性体の攻撃力は凄まじく、装備を大幅に強化された【SUPER-GUTS】をもってしても撃退は困難かと思われた。”光の巨人”はもういないという現実の元で、彼らに立ち向かわねばならかった【SUPER-GUTS】のプレッシャーは我々の想像を絶する。
「今だから言いますけど、帰れるところがあったら帰りたかったですよ本当。帰るところが地球しかない以上、出来ない相談なんですけどね(笑)。その時にね、何か聞こえたような気がしたんです。その時は何て言ってるのかわからなかったけど、とにかく何か聞こえた気がした。そしたら目の前に物凄い光が広がって、おさまったときには赤い火星の大地にもうあいつ”*27が立ってたんです。”あいつ”の姿を見たら、何故か心が前を向けた。”あきらめるな、勝負はまだこれからだ”って。そう思った瞬間気付いたんです、ああ、さっき聞こえた言葉はこれだったんだって。って俺すっごい非科学的なこと話してるね(笑)俺職業何だったっけ(笑)」(元SUPER-GUTS隊員/現TPC科学研究局宇宙考古学研究室長カリヤ・コウヘイ談)
 二度とは無いと思われていた奇跡が起こった。”光の巨人”が人類の前に再び現れたのだ。しかもそれは【ウルトラマンティガ】とは別の個体であった。ウルトラマンダイナ】*28と呼称された”新たなる光”は、その戦闘スタイルや技、垣間見える性質などは【ウルトラマンティガ】とは大きく異なるものの、やはり一貫して人類を護ろうとするかのように闘い続けた*29
 スフィア襲来を皮切りに、再び怪獣と侵略者が地球を襲う悪夢の時代が始まった。後に言う”スフィア大戦”である。だが人類は再び”光の巨人”の力を借りながら、一度は得た未来を護るために闘い抜いた。

 止めどなく革新してゆく技術体系の中で、GWシリーズは少しずつ最前線から下がりつつあった。しかしながら【SUPER-GUTS】に配備された新開発の主力航空宇宙機は間違いなくガッツウイングの蓄積を元に開発されたものであり、またその基本設計が時代遅れになりながらも汎用性と普及率の高いGWシリーズは、新人パイロット育成現場や最新装備の配備がままならない地域などにおいては未だ必要な翼であった。この項では、ネオ・フロンティア時代に活躍したGWシリーズ達とその眷属を紹介しよう。






○G-EAGLE ガッツイーグル(参考)

ガッツイーグル


<アルファ号接続時>
合体時全長:24m 大気圏内最高速度:マッハ6.0 乗員:1〜8名
<アルファスペリオル号接続時>
合体時全長:26m 大気圏内最高速度:マッハ7.0 乗員:1〜8名

 「巨人なき後の防衛力の確立」は、2010年以降の人類の命題であり切望だったといえる。2013年に【TPC】を中心に各国の技術者達が協力して開発を始めた「イーグル・プロジェクト」、その成果が2015年に結実した機体がこのG-EAGLEである。
 G-EAGLEを始めとしたこの時期の【TPC】新開発航空宇宙機の特徴として、「ネオ・マキシマ・エンジン」の搭載がある。2000年代に確立されたマキシマ〜ニュー・マキシマ・オーバードライブ理論を、キサラギ・ルイ博士が更に応用発展させた「ネオ・マキシマ・ドライブ」は、旧マキシマより効率よくエネルギーを抽出することができ、ゼロ・ドライブのような光速飛行には至らぬものの、理論上は極めて光速に近い速度を得ることが可能であり、このエンジンの実用化がネオ・フロンティア時代の太陽系防衛線確立を可能にした。
  GW-01A/02Aによるフォーメーション攻撃やGW-EX-Jの合体分離攻撃の実績が重視され、G-EAGLEは三機合体分離戦闘機として設計された。「アルファ号」「ベータ号」「ガンマ号」の三機がそれぞれネオ・マキシマ・エンジンを搭載しており、三機のエンジンのエネルギーを連結噴射して得た強大な推進力は、地球から冥王星までを一日足らずで往復してしまう。この速度をもって太陽系内のあらゆる場所へ到着し、状況に応じて分離もしくは合体のいずれかの状態で任務を行う*30
 G-EAGLEを構成する三機はそれぞれ全く違う特性を持ち、分離状態で多彩なフォーメーション攻撃を可能とすることは勿論、どれか一機種の機体を複数投入して特定任務に特化した飛行部隊を編成することも可能である。また三機の内二機のみを接続した準合体形態や、特殊捜索救助機「コネリー07」及び万能潜航艇「ガッツマリン」などをガンマ号の代わりに接続して目的地へ長距離高速移動が可能など、汎用性も極めて高い設計となっている。

アルファ号
 ・アルファ号

全長:14.8m 大気圏内最高速度:マッハ7.5 乗員:1〜2名

 合体時に機首を構成する高速戦闘機。
 全翼型のボディで基本三機の中でも最も速い速度で飛行する。運動性も高く、その身軽さを生かしたヒットアンドウェイ戦法で敵を攪乱しつつ攻撃する。またその速度を利用しての偵察任務などにも運用された。両翼端にニードル、機首にGW-02A搭載スパル砲の応用発展型であるレーザー熱線砲「ジーク」を装備。機首下部にはオプション装備搭載ブロックがあり、多様な特殊装備を懸架可能。


ベータ号
 ・ベータ号

全長:12m 大気圏内最高速度:マッハ5.5 乗員:2〜4名

 合体時に胴体と主翼を構成する司令/輸送/爆撃機。
 最大四人が搭乗可能で、現場での移動司令塔として機能する。三機の中では一番速度が遅いが最も安定した飛行性能を持ち、特殊装備搭載や物資・人員の輸送にも適している。機体下部に大型貨物を吊り下げての運搬能力も高い。両翼にニードルと、GW-01Dの重火器ユニットを参考にしたビーム砲「ボルキャノン」を装備。


ガンマ号
 ・ガンマ号


全長:17.5m 大気圏内最高速度:マッハ6.5 乗員:1〜2名
 合体時にフレームと尾部を構成する攻撃/哨戒機。
 特異な形状のため大気圏内での飛行速度および運動性はアルファ号に劣るが、エンジン出力はアルファスペリオル号を除く三機の中では最も大きく、合体時におけるメインノズルの役割を果たす。異様なフォルムの機首はネオ・マキシマ・エネルギーを利用した大型荷電粒子ビーム砲「ガイナー」で、その構造はGW-02Aのデキサス砲の流れを汲むものである。他に両翼端にニードルと、機首上部左右に各種ミサイル兵器を発射可能な200mmディスチャージャーを装備。


アルファスペリオル号

 ・アルファスペリオル号

全長:17.7m 大気圏内最高速度:マッハ11 乗員:1〜2名

 後期に投入された、アルファ号に代わって機首を構成する新型機。
 強力化した怪獣・異星人対応のために強化された武装は、得てして戦場となる地域の周辺被害も増大させる結果となった。この問題を解決するために、レーザー兵器の収束率向上と、後翼端に配置されたサブスラスターを駆使した高度な機体機動制御を実現させることで、攻撃命中率を高めたのがこのアルファスペリオル号である。ただしそれを実際に実現するためにはコンピューターによる機体制御補助では追いつかず、結果としてほぼフルマニュアル(全手動操縦)に近い操作で複雑な機動を可能とするパイロットの技量が求められるという、極めて扱いづらい機体となった*31。ネオ・マキシマ・エンジンはアルファ号より出力の高いものが搭載され、アルファ号を上回る推力と合体時の出力増強、及び新武装の搭載を可能にしている。両尾翼端にニードル、機首左右ブロックに強化型レーザー熱線砲「ネオジーク」を装備、機首には合体時に使用する「スパークボンバー」の砲口が搭載されている。

 三機合体状態は高い推力ばかりでなく、ネオ・マキシマを応用した新たなビーム兵器の使用も可能にした*32。合体時には両形態ともに三機のネオ・マキシマ・エネルギーをビーム状に収束して発射する「トルネードサンダー」が、またアルファスペリオル接続時には同様のエネルギーを光球状に凝縮した「スパークボンバー」が、それぞれ機首から発射が可能になる。  HPE宙/空エンジンも【W.I.N.G.SYSTEM】も無くなったG-EAGLEはGWシリーズの面影を失ったように見えるが、その運用思想と各種装備は間違いなくGWシリーズによって培われたものであり、何より”スフィア大戦”の主力として重要な機体である。
 【SUPER-GUTS】のみならず世界各地の主要防衛兵器として配備されたが、間もなく発表される【NEO-SUPAR-GUTS】の新主力兵器の登場に合わせて、最前線での役目を終える予定となっている。



●GW-01M ”ガッツウイングM”

”ガッツウイングM”


開翼時全長:14m 大気圏内最高速度:マッハ5.7 乗員:1〜2名

 2014年、【GUTS】解散直前にホリイ・マサミ隊員が、既存GWシリーズのネオ・マキシマ・エンジン換装を検証するためにGW-01Aを改装した実験機。一機のみ存在する機体で制式採用機ではないが、便宜上「M」の記号で区別されている*33
 外装はマーキングも含めてGW-01Aと一見区別がつかないが、【W.I.N.G.SYSTEM】内のHPE宙/空エンジンを撤去し、大幅に小型化したネオ・マキシマ・エンジンに換装しているため、よく見ると翼エンジン部のレイアウトが違っているのが解る。この換装によりネオ・マキシマによる飛行と新ビーム兵器の使用が可能になり、既存機のエンジン換装が可能であること自体は証明された。しかし薄い主翼内に搭載できるほど小型化したネオ・マキシマ・エンジンはパワーに限界があり、特に大気圏内最高速においては際だった性能向上が見られず、換装コストも合わせて検討した結果、GW-01既存機のネオ・マキシマ制式換装は見送られている。ただしエンジン搭載容積及び機体強度が充分であれば換装は有効であるとして、GW-01MのデータはGW-EX-Jのエンジン換装に役立てられた。
 実験後は【TPC】宇宙開発局日本関西支部の一施設に研究用機として保管され、2019年の「ネオジオモス」撃退時に一度だけ出撃が確認されている。



●GW-01Z ”ガッツウイング・ゼロ”

”ガッツウイング・ゼロ”ZERO教官機仕様

”ガッツウイング・ゼロ”ZERO訓練機仕様

”ガッツウイング・ゼロ”TPC情報局所属仕様


開翼時全長:14m 大気圏内最高速度:マッハ5.7 乗員:1〜2名

 2013年、「イーグル・プロジェクト」のための再編成を控えた【TPC】開発局のうち旧カシムラ・チームに所属していた面々が、GW-01Aの更なる改装を試みた。新機体開発が例え順調に進んだとしても、世界各地に充分に普及するには当然時間がかかると考えたカシムラ博士達が、新機体普及までの間GW-01を地球防衛のつなぎとして有効活用するために、既存のGW-01を「最終仕様」へと昇華させることを「カシムラ・チームの最後の仕事」としたのである。
 既存技術の洗練、新技術・新素材の応用を駆使しつつ、既存のGW-01の基本性能を損なわないまま生産性・整備性を高め、性能全体を僅かながら更に向上させた。カシムラ博士をして「これ以上GW-01の性能向上のために出来ることは何一つ無い」とまで言わせた機体だが、それは同時にUN-XAFW-1から始まった【W.I.N.G.SYSTEM】を始めとする機体構造の限界をも示していた*34
 2014年にこのGW-01Zの改装用設計図を全【TPC】関連組織に配布して、役目を終えたカシムラ・チームは事実上の解散を迎え、一部の者は「イーグルプロジェクト」へ、その他の者はそれぞれの道へと進んでいった。この図面を元に既存のGW-01AのほとんどがGW-01Zに改装され、同時に未だ戦力の伴わない地域への補助戦力として約50機のGW-01Zが新規生産された。
 機体記号の「Z」は文字通り「最終仕様」を示すもので、この記号と【TPC】パイロット養成機関【ZERO】で使用されたことなどから、”ガッツウイング・ゼロ”と呼ばれている。



●GW-01QS ”ガッツシャドー”

”ガッツシャドー”


開翼時全長:14m 大気圏内最高速度:不明 乗員:1〜2名

 【TPC】警務局特務機関「ブラックバスター」所属機。”ガッツシャドー”のコードネームを持つ。確かに「存在」はした機体だが、【TPC】データベースにはそのような機体の記録は一切残されていない「非制式仕様機」である。
 クリオモス島の兵器工場化と宇宙戦艦「プロメテウス」建造、火星における人造ウルトラマン・テラノイド製造「F計画」など、”スフィア大戦”中期〜後期のゴンドウ参謀旗下の警務局「暴走」は有名だが、2018年に発足されたこのブラックバスター隊もその一つである。「光の巨人を頼らずに地球を守るための手段を検証する組織」という名目で発足したとされているが、当時は【TPC】内でも極秘扱いだった上に、【TPC】データベース上から消された情報、更にはあらかじめ登録されなかった情報が極めて多く、拠点だったと思われる火星地下基地がテラノイド暴走によりゴンドウ参謀と共に壊滅したため、その実体は未だ不明な点も多い。使用機であるGW-01QSについても残されている記録は少ないため、ここで触れる情報の多くが当時の関係者の証言に基づいたものであることをお断りしておく。
 GW-01QSGW-01Aの改装機だが*35、基本構造を変えないまま究極的ブラッシュアップを図ったGW-01Zと違い、大胆な、ある意味では無茶な改造を加えることで高い性能を得ている。GW-01Mのように従来の【W.I.N.G.SYSTEM】内エンジンスペースのみを利用するのでなく、機体後部に小型ネオ・マキシマ・エンジンのメインユニットを直接固定接続*36し、従来の翼内HPEエンジンに補機類を詰め込んでメインユニットの出力を調整している。更にメインユニットのエネルギーを翼内補機を通じてカスケードさせ、従来の翼内ノズルもネオ・マキシマ化させており、これにより大幅な推力向上を実現した。その詳細数値は不明なままだが、ある証言によるとG-EAGLEアルファスペリオル号に匹敵する高速性能と航続力を持っていたという。本当ならば長時間の最高速機動には機体が耐えられないはずだという専門家の意見もあるが、その点についてはGW-01iのようにフレームを強化していた可能性や、極秘任務という性格上から安全性が度外視されていた可能性が指摘されている。
 装備・武装に関してもGW-01QSは謎が多い。機体表面は光波・電磁波ステルス迷彩機能を持ち、その姿とレーダー&センサー上の機体反応を短時間ながら完全に消すことが出来た。また各種レーザーやネオ・マキシマ・ビームは既存の技術だが、クローンダイゲルン」*37撃破時に使用された偏曲マキシマ・ビームは、当時の【TPC】開発局でもまだ実用化されていない最新技術であった。どちらも並みの技術や設備では実現不可能なものであり、それらがどういった経緯でブラックバスターに渡ったのか、その後の関連情報管理はどうなっていたのかが今も追求されている。
 恐らく10機近くのGW-01AがGW-01QSに改装され使用されたと推測されるが、そのほとんどはテラノイド暴走時に撃墜されたらしく、一部の無惨な破片が回収されたのみである。【SUPER-GUTS】隊員ユミムラ・リョウおよびアスカ・シンが火星離脱に使用したのが最後の機体と言われているが、”スフィア大戦”最終決戦直前に木星付近で両名が機体を放棄して脱出し、機体そのものは「グランスフィア」が生成した疑似ブラックホール空間に吸い込まれたと思われる。
 【TPC】のモラルと情報管理の向上のためにも、その全貌解明が期待される。



○GW-R (ペーパープラン)

GW-Rフライトモード

GW-Rロボットモード


飛行形態時全長:36.4m 格闘形態時全高:32.6m 乗員:1名

 近年「発見」された、【GUTS】〜【SUPER-GUTS】移行過渡期の試作案の一つ。
 「人間型格闘用巨大ロボット兵器」と言うと、まるで若年層向け娯楽映像コンテンツのように思えるが、巨大な体躯を振り回し、なおかつ遠距離への攻撃をも可能にする特殊能力を往々にして備えている怪獣に対し、周辺被害を最小限に押さえつつその行動を阻止するには、怪獣と同程度の大きさを持つ「格闘兵器」が怪獣の懐に入り込み、格闘肢を用いて動きを押さえつつダメージを与えることが最も有効であることは、二体の”光の巨人”が証明している。この「対怪獣大型格闘兵器」という思想から実際に開発されたのが警務局の「F計画」における人造ウルトラマンであるが、ほぼ同時期に当時の【TPC】開発局が、方法論は違うとはいえ結論として同じ手段に辿り着いたのは、ある意味当然の帰結といえる。
 本機は強固なフレームを持つGW-02Aを元に「巨大格闘ロボット」の可能性を模索したプランで、恐らくは投入に際し最も問題になるであろう現場への移送手段を解決するために、飛行形態から格闘形態への変形を前提として試案された。図面を見る限りその変形構造自体はかなり煮詰められているようだが、当時試作設計に関わった元カシムラ・チームの一人によると「当時の技術で飛行と変形が両立できる大きさは30m程度で、大抵の怪獣には体格的に相手にならないことは明白だったし、それ以前に怪獣との質量のぶつかり合いに耐えられるフレームや関節が実現できるはずが無かった。あくまでひとつの可能性の模索テストにすぎず、実用化なんて最初から考えていなかった」という。
 当然の如く試作原案図のみが書かれた状態でお蔵入りし、そのままスタッフからも忘れ去られたGW-Rであったが、その後数奇な運命を辿ったことが判明した。
 後になって解ったことだが、プラン凍結後まもなくGW-Rの全てのプランデータが、誰にも気付かれぬまま「行方不明」になってしまっていたのだという。時を経て2018年、「モネラ戦役」時に宇宙戦艦「プロメテウス」がモネラ星人に奪われ、「プロメテウス」は巨大戦闘ロボ「デスフェイサー」に変形、当時のクリオモス島にあった【TPC】兵器開発工場を壊滅させた。一見何の関係もない出来事のように見えるが、後に行われたクリオモス島の残骸解析報告で得られたデータの中から、今年になってこのGW-Rの関連データが「発見」されたのである。
 プロメテウスについては「F計画」関連同様、失われた、或いは元々記録されていないデータが多く、直接の開発者であったキサラギ・ルイ博士自身も、当時はモネラ星人の洗脳下に置かれていたためか記憶の大部分に欠損があり、未だ不明な点が多い。だがプロメテウスからデスフェイサーへの「変形」は、当時の映像記録からもその基本変形が極めてメカニカルな過程を経ていることが確認でき、一方でモネラ星人自身は、その円盤も含めて有機的な機能を高度に発達させている反面、彼らの独自構成物には機械技術的な面が全く見られない。これらのことからプロメテウスの格闘形態への変形は、モネラ星人の超常能力に寄るところも多いとは思われるものの、基本的には設計段階で既に盛り込まれていたと見る意見が多かった。そこに今回のクリオモス島残骸解析でのGW-Rデータ発見が報告され、当時【TPC】のデータベースにアクセス可能だったキサラギ博士を介してモネラ星人がGW-Rのデータを入手、プロメテウスの設計変更に応用したのではないかとの見方が強まり、一部のメディアやコミュニティで話題になった*38
 ちなみに前述の元開発局員にGW-Rの現在での実現可能性を訊いてみたが、「無理無理。何か凄い新素材でも生まれて何万トンもの荷重のかかるプロレス技に耐えられる骨と関節が実現しないと。まあ希望的に見てもあと20年は無理じゃないかな」とのことである。








*23
 ガタノゾーア撃滅後、【ウルトラマンティガ】はまるで全ての役目を終えたかのように消えていったという。「消滅」が「死」なのか単に「去った」のかは今もって不明だが、これ以降「特定可能な個体」としての【ウルトラマンティガ】が地上に現れた記録が無いことも確かである。唯一の目撃例として、2018年の日本K-3地区での「モネラ戦役」において【ウルトラマンティガ】の姿が確認されているが、この時に観測された素粒子反応が「過去のデータに比べ実体として認識するには極めて曖昧な数値」であることから、その個体が2011年以前の【ウルトラマンティガ】と同一個体であるか否かについては意見が割れている
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*24
 「人類を護るため」という大義名分は、時に暴走とも言える結果を生み出すこともしばしばあった。ネオ・マキシマを利用した高い宇宙航行力と強大な武装を持つ宇宙戦艦「プロメテウス」の建造(モネラ星人にその計画を利用されてしまった)や、火星での兵器としての人造ウルトラマン「テラノイド」製造計画=「F計画」など、警務局の一部により極秘に行われた防衛計画が後に次々と発覚している。F計画に関しては、近年少しずつ情報公開の始まった2011年の「ルルイエ事件」も深い関わりがあると見られ、後の教訓のためにもその全貌の公開が待たれる。しかし忘れてはならないのは、”闇”を一度経験した当時の市民達が、【TPC】の軍備増強を基本的に支持していたことであろう。あの恐怖の時代の後では無理からぬ事であり、理不尽な災害や暴力に人類が屈さねばならない理由など勿論無いが、一度は地球非武装化を目指した種族としては皮肉な話でもあり、何より行き過ぎた力を自覚無く持ったまま宇宙へ進出することは、地球人類自身がどこかの異星人対して”侵略者”になってしまう危険性を孕んでいる。恐らく我々はこのジレンマに永久に悩まされるであろう
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*25
 なお旧【TPC】極東本部であったダイブハンガーは”闇”の襲撃による破壊から復旧され、【TPC】航空司令部として機能すると共に、フロアの一部が激闘の時代を後世に伝えるための公開記録館に当てられ、一般に開放されている
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*26
 サワイの辞任の後、ヨシオカも警務局長官職を退き、未だ防衛組織/設備の整わない各国の指導に当たった。警務局はゴンドウ参謀に引き継がれたが、この時期が「警務局暴走」の温床になったというのが通説である。現に「プロメテウス計画」や「F計画」などの発端がこの時期に集中している
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*27
 勿論【ウルトラマンダイナ】のことだが、それにしても【GUTS】や【SUPER-GUTS】隊員の誰もが、”光の巨人”を語る時にまるで”懐かしい友人”を思い出すかのような口調になるのは何故だろうか。市民の中には”光の巨人”を神にも等しい存在と考える者も多く、”光の巨人”を直接的に神と崇める形の新興宗教などもいくつか生まれたが、そういったことが話題になるとき、「”光の巨人”は神などではない。我々の大事な友である」と真っ先に否定するのは決まって彼らである。同じ闘いの中で死線を越えてきた”戦友”というような想いがやはりあるのか、或いは我々には思いも寄らない理由があるのか。我々記者達も何度かそのことを訊いたが、いつも優しい微笑みを浮かべながら無難な言葉ではぐらかされてしまう。いつかその真意に辿り着きたいものだ
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*28
 命名:SUPER-GUTS隊員(当時)ミドリカワ・マイ
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*29
 【ウルトラマンダイナ】については、【ウルトラマンティガ】以上に不可解な謎が多い。ユザレのメッセージや石像・古代遺跡など、理解は困難にしてもその存在根拠を示すいくつかの物証がある【ウルトラマンティガ】と違い、【ウルトラマンダイナ】にはそのルーツに当たる物証・情報が皆無であり、正に突然現れたとしか言いようがないのが現状だ。無論他のいくつかの事例にあるように【TPC】情報局が情報を隠蔽している可能性は否定しきれないが、【ウルトラマンティガ】やイーヴィルティガ、テラノイドなどの関連情報の公開度を考えると、【ウルトラマンダイナ】の情報だけが厳重に隠蔽される理由は考えにくい。その姿と行動、ユザレの言葉にある「(”光の巨人”は)あるものは滅び、あるものはこの星を去った」という一節、「モネラ戦役」にて一時的に姿を現した【ウルトラマンティガ】とおぼしき個体と共闘した記録などから、【ウルトラマンティガ】と同じ種族、或いは深い関係がある可能性が指摘されてはいるが、確かなことは何一つとして分かっていない。何より”光の巨人”が再び現れた理由は何か。未熟なまま宇宙へ飛び出そうとした人類を見ていられなくなったのか、もっと何か深い理由があるのか。その謎が解ける頃には、我々人類も少しは彼らの純粋さ・崇高さに近づけているだろうか?
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*30
 分離攻撃を前提としなければ、合体状態のG-EAGLEは三機のうちどれか一機のコクピットにパイロットが一名搭乗していれば操縦可能。リモートコントロールによる分離機の無人機動も可能ではあるが、”ユザレの試練”期より更に高度化・複雑化した怪獣や異星人の戦闘方法には対応しきれないことが多く、あまり使用されなかった
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*31
 このためかアルファスペリオル試験機の一機が試験飛行中に墜落事故を起こし、テストパイロットのフドウ・タケルが死亡している
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*32
 ネオ・マキシマは無限の可能性を持つと言われるほど応用範囲の広いエネルギーシステムだが、その可能性は時に開発者自身の想像をはるかに越える結果を生みだし、しばしば人類の業の深さを表出させる。GW-01MGW-EX-J後期型に搭載されたネオ・マキシマ・ビーム、及びG-EAGLEのトルネードサンダー/スパークボンバーなどは、ネオ・マキシマで得られるエネルギーをビーム状に収束して発射するものであり、これはこれで非常に高い破壊力を持つ。だが宇宙戦艦プロメテウスに搭載された「ネオ・マキシマ・フェルミオンクラッシャーカノン」、通称「プロメテウス型ネオ・マキシマ砲」は前述のネオ・マキシマ兵器とは一線を画する。巨大なネオ・マキシマ・ジェネレーターで発生させた光子同士を更に高次元対消滅させて得たエネルギーを放射することで、攻撃対象を「破壊」ではなく素粒子レベルから「分解・消滅」させてしまうのだ。プロメテウス搭載のこのネオ・マキシマ砲は、理論上では惑星クラスの物体すらも分解可能であったという。その威力があまりに危険すぎるとして「モネラ戦役」以降プロメテウス型ネオ・マキシマ砲の技術は封印されたが、例外的に”スフィア大戦”最終決戦(通称”太陽系決戦”)時に、「グランスフィア」撃退のため移動戦闘宇宙基地「クラーコフNF-3000」に搭載され使用されている。一歩扱いを間違えれば自らを危機に陥れる危険性の高い代物であり、現在は再びプロメテウス型が封印されたと言っても、その発射源として利用可能なネオ・マキシマジェネレーターは現在も多数稼働中である。旧世紀の核兵器のような愚行を繰り返さぬ為、また我々自身がどこかの異星人に対する侵略者にならぬ為にも、我々は己の叡智の行く末を厳しい目を持って監視し続けなければならない
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*33
 Mの由来は「マキシマ」のMというのが通説だが、一部ではホリイ・「マサミ」のM、ホリイ・「ミチル」のMだとする説もある
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*34
 GW-01AとGW-01Zの最も大きな違いにコンピューターによる飛行制御補助の充実があるが、これは操縦性の向上と引きかえに大きな欠点ももたらした。元々GW-01AはGW-02Aや後期の機体に比べると、外部からの電磁波などの干渉に少々弱い面があり、オートパイロットやコンピューターサポートに頼った運用が思わぬ事態を引き起こす可能性が高まってしまった。実例としては、スフィアの初回襲来時に戦闘に入らざるを得なくなったパイロット養成機関【ZERO】訓練機の一機が被弾して脱出する際に、スフィアの何らかの磁場的影響を受けたのか自動脱出モード選択が誤作動を起こし、コクピットブロック射出が行われずに大気圏内用座席射出が行われたため、パイロットが宇宙服一つで衛星軌道に放り出されてしまった例がある。またGW-01Zに限らず、コンピューターによる制御や各機体及び基地間でリンク化された情報システムの行き過ぎが敵に逆手に取られた例もあり、「ラブモス事件」では情報リンクシステムに接続していたグランドーム所属の兵器類のほとんどが、機械怪獣化した衛星探査ロボット「サタンラブモス」に一時的に同化されてしまった。こうした教訓が、アルファスペリオルにおけるフルマニュアル操縦思想の元になっているとする説もある
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*35
 ブラックバスター使用機の原型にGW-01Aが選ばれたのは、ブラックバスター自体が半ばゴンドウ参謀の私設機関に近いこと、前面で地球防衛を担う位置にないことなどから、予算上G-EAGLEの導入や新兵器の開発が難しかったという説がある。だが既存機改造とはいえかなりの手が加えられていること、最終的にゴンドウ参謀がテラノイドを完成させていることなどから、その資金面については未だ追求の余地が多い
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*36
 この構造により翼を完全に閉じるスタンバイモードは不可能になったが、全開〜半開限定での翼可変およびハイパーモードへの変形は可能であったと分析されている。後に調査された火星地下基地の痕跡からは格納庫領域がかなり広かったことが解っており、格納時はフライトモードのまま、もしくはハイパーモードで行われていたと推察される。ハイブーストノズルは主に姿勢制御スラスターとして利用されていたのだろう
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 この時の戦闘は現場へ出動した【SUPER-GUTS】の目前で行われたため、映像を始めとする貴重な資料が結果的に残ることになった。なお「クローンダイゲルン」は、元【TPC】生物工学研究所助手ヤマザキ・ヒロユキにより過去の怪獣が培養再生されたもの。ヤマザキの師・オオトモ博士は同研究所の研究と称してやはり過去の怪獣である「シルバゴン」「シルドロン」を再生させ、更には複数の怪獣の遺伝子を融合させた「ネオザルス」を誕生させている。ヤマザキ自身はオオトモの死後しばし行方をくらました末、「エボリュウ細胞」を宇宙から地球全土に散布しようと企んだ。その「エボリュウ細胞」は、かつて【TPC】宇宙開発センターが研究していた未知の宇宙細胞で、2007年の「エボリュウ事件」の直後に記録上は全ての資料とサンプルが処分されたはずにも関わらず、2010年には当時の【TPC】宇宙開発局特務部門「D機関」によって再研究され異常進化生物「メタモルガ」を生みだし暴走させ、その後は警務局によって厳重に封印されたはずの第一級危険物である。ゴンドウ参謀と当時の警務局のみならず、いかなる人間も身に余る力によって道を誤る可能性があることを証明する話であり、我々人類は未だ自身が愚かで未熟であることを決して忘れてはならない
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*38
 GW-Rの「発見」がきっかけで再注目されたもう一つの存在が、「MG-5」こと「マウンテンガリバー5号」である。そもそもは当時【SUPER-GUTS】ファンによって運営されていたファンサイトの掲示板に、「火星でしか採掘されないスペシウムっていうエネルギーを主武装にしたMG-5って名前の巨大ロボット兵器がTPC火星基地で開発中で、あたしがそのテストパイロットに選ばれちゃった!」という内容が「ミドリカワ・マイ隊員」名義で書き込まれたことが発端で、その後ファンの間で与太話的に伝えられていたものである。いかにも荒唐無稽な話であり、何よりスペシウムなる物質もエネルギーも火星どころか太陽系のいずれにおいても発見された記録は全くないため、勿論当初は熱心なファンの妄想の産物だと思われていた。しかし数年後、【TPC】情報局が広報部経由で公開した資料の中に、【ウルトラマンティガ】出現時のコードネーム決定の際に「マウンテンガリバー」なる名称が提案されていたことが書かれていたため、同じ名前を持つMG-5存在の可能性がファンの間で囁かれた。もっともその後もMG-5に関する資料は何一つ見つかっておらず、今回のGW-R発見を根拠に【TPC】のロボット兵器開発の一環としてのMG-5計画実在説を語る者もいるが、依然としてその存在を立証するものは皆無である
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