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目次
←翼の胎動
ガッツウイング誕生→
●FW-1
●FW-2
○FW-OB
○NSDA-2000SC
○BTER 228VR
”公正なる翼”
正式に開発が決定したカシムラ・チームの新型航空宇宙機は、当初は【UN-A/UN-B】のコード名でその実用試験に入った。最大の課題であった「HPE宙/空エンジン」と【W.I.N.G.SYSTEM】の実用化は事実上UN-XA/UN-XBの段階で成功しており、後は安全性・操作性・生産性を考慮した改良を加えた上で国連の要求仕様を満たすだけとなり、開発は順風満帆に思われた。が、その国連の要求仕様の一部が、思わぬ物議を醸すことになる。基本装備として「武装」が盛り込まれていたのだ。
災害救助のために障害物を撤去・破壊する装備の多くが「武器」として転用可能であることは自明の理であり避けがたい事ではあったが、特に【UNDF】の具体実現に力を尽くした経緯を持つ防衛軍日本代表ヨシオカ・テツジが、「未だ一部地域で発生するテロや紛争への投入は避けられず、また人類以外からもたらされる悪意や災いに対抗するためにも自衛武装は不可欠である」として、新型機への火器類搭載を強く要求したのだ。ヨシオカが日本の防衛組織の元高官であったこともあり、サワイ支持派のコミュニティは勿論、開発チームの中にも少なからず居る平和主義者達が難色を示したが、結局ヨシオカの政治力で押し切られる形となった。
「『UN-AとBのA・Bは単にアルファベットを順番に付けただけなんだけど、あのスタイルの航空機にAとかBとかあると、どうしても攻撃機とか爆撃機とか連想しちゃうでしょ。事務総長の世界非武装化の礎になる機体にそういうイメージが残るのはどうだろう、ってメグミが言うのよ。綺麗事だけど、他ならぬ彼女の言うことだし、まあもっともかなとも思ってね』 当時プロジェクトに参加していた元スタッフが聞いたという、カシムラ博士の発言である。推測だが”メグミ”とは恐らく、当時の国連科学技術省地球外知的生命体交渉計画班のリーダー、イルマ・メグミのことと思われる。彼女の夫であった人物がUN-XAの実験で命を落としていることが”他ならぬ”理由であろう」
とあるネットジャーナルにこのような記事が書かれているが、この言質自体は未だ確認されていない。しかし今に至るまでカシムラ、イルマともどもこの発言を特に否定しておらず、また当初は【Project UN-Flyer : UN-A/UN-B】だったコード名が、国連への正式仕様書提出直前に【Project Fair-Wing(”公正なる翼”) : FW-1/FW-2】に訂正されたことは、現在もTPC公開ライブラリで確認出来る事実である。
FW-1/FW-2の開発は順調に進んだ。双方とも開発を開始した2003年の内に試作機での全ての実験を終え、2004年初頭には両タイプの生産型がロールアウトしている。少数ながら各地に配備されたFW-1/2は、【UNDF】末期の新鋭装備としてここぞという困難な状況に優先的に投入され、2005年末に至るまでに数々の活躍の記録と多くの有用なデータを残した。だが一方で、未だ各地に残る紛争解決やテロ組織壊滅のために「同じ人間」に対して引き金を引く事例が決して少なくなかったことも、また事実であった。
●FW-1 フェアウイング−1
開翼時全長:14m 大気圏内最高速度:マッハ4.5 乗員:1〜2名
極超音速、超長距離、V/STOLを含む特殊機動、更には宇宙空間での運用をも可能とした、「究極の小型航空宇宙機」。ごく基本的な構造はUN-XAを踏襲しているが、各部の改良と大幅なレイアウト変更により事実上別機体となっている。
【W.I.N.G.SYSTEM】はこのFW-1において完成を見た。胴体内エンジンで発生させたエネルギーを翼縁ノズルへ送っていたUN-XAと違い、FW-1ではHPE宙/空エンジンそのものを【W.I.N.G.SYSTEM】内に搭載してしまい、吸気(大気圏内のみ)・燃焼・噴射といった推進に必要なシステムは基本的に全て翼内で完結されている。翼と胴体との接続は、ほぼ純粋に翼可変のための駆動システムに特化。エンジン搭載の必要を失ったため構造が単純化した胴体は、機体剛性強化・可変翼駆動部強度維持・豊富な燃料タンク・任務に必要な装備の搭載・パイロットの安全性向上等のための構造容積を得ることが出来た。また各構成部品を水平方向に一体化してレイアウトすることで、リフティングボディ効果も確保されている。
更にこのレイアウトは、【W.I.N.G.SYSTEM】を含む主翼を後部へ一直線上にに閉じることを可能とし、基地施設や艦船などへの格納形態(スタンバイモード)として利用された。翼内ノズルは片側三基ずつ計六基あり、ノズル自体のベクトル可変と翼後縁スタビライザーを合わせることで、自在かつ強力な噴射を可能にしている。
UN-XA時に【W.I.N.G.SYSTEM】の可変機動に頼りすぎ、安全性・安定性・操作性に課題を残した経験から、尾翼は大型で厚みのある空力偏向能力と耐久性の高い構造に変更された。
UN-XAでの課題であったハイパーモード時の制御ソフト改良は一定の効果を上げたが、自在な機体制御にはやはり多少の熟練が必要であった。また単なる通常垂直離着陸をハイパーモードに頼るのは安全性が低下する上、操作も機体動作も無駄が多いとの判断から、機体下面左右にV/STOL用HPEノズルが追加されている。
飽くなき改良を繰り返したHPE宙/空エンジンは、UN-XA時に比べて大幅に出力が向上。UN-XAに比べて空力的には少々不利な機体形状であるにもかかわらず、その推進力でマッハ4.5という極超音速を実現している。
プロジェクト初期からの懸案であった大気圏外での活動も、基本的には可能となった。HLV(衛星軌道間輸送ロケット)などを用いて衛星軌道へ移送すれば、宇宙空間においても充分な機動を行うことが出来る。更に機体全体を多う特殊装甲材のおかげで単機での大気圏再突入も可能なことが実験で確認されている。ただし単体での大気圏離脱までは今一歩及ばず、長時間の宇宙航行にもいくつかの問題点が残ったため、宇宙用機としての本格配備は見送られている*3。
本体後端の尾翼の間に配置されたサブスラスターは、水平飛行時の補助推進装置としては勿論、翼内HPEエンジンが何らかの理由で使用不能になった場合の緊急推進装置としても利用される。機体下部バルジ部分の前半部は汎用搭載スペースに当てられ、牽引用電磁ウインチを始めとする装備の懸架や、投下用援助物資などの積載コンテナに使用される。なおバルジ部後半部には前着陸脚が収納されている。
最大の特徴は機首のオプション装備換装システムである。機首そのものを交換可能なユニットとすることで、従来の小型航空機の範疇を遙かに越える装備搭載力を実現した。飛行活動に必要なごく基本的な通信及びレーダーシステムは本体側に搭載されているため、いかなるユニットを装備しても通常飛行に問題がないことも特徴である。装備によって機首重量が大きく変わるため、その都度飛行バランスが変化する難点があるが、【W.I.N.G.SYSTEM】の可動性を利用した飛行制御ソフトを重量バランス変化に対応させることで、その問題をクリアしている*4。
・汎用ユニット
あらゆる局面で使用された、事実上のメインユニット。左右に二門ずつ計四門の砲門を持ち、ユニット全体はその発射装置と装弾スペースで構成されている。四門のうち内側の二門は、自衛及び矮小障害物破砕を目的とした7.62mm機関銃。外側の二門は120mmマルチディスチャージャーで、弾倉ブロックに搭載された最大16発のロケット弾を発射する。ロケット弾の種類は信号弾、照明弾、消火弾、破砕爆薬弾(威力別に弾頭三種有り)、凝固弾(崩落しそうな土砂や岩盤・建造物などを一時的に凝固させる接着弾)、冷凍弾(土石流などを一時的に冷凍させ堰き止めたり、洋上や湖上の一部を凍らせて作業や着陸のための”氷島”を生成する液体窒素弾)など多岐にわたり、他種類の弾を搭載し現場状況に応じて選択発射することは勿論、一種類の弾頭だけで弾倉を埋め尽くし限定状況に特化させることも可能である。
・消火専用ユニット
消火作業に特化したユニット。左右のタンクに特殊消火剤を大量に搭載し、機種前部及び下部から噴射する。広域に渡る火災は勿論、市街地でのビル火災などでのピンポイント消火にも活躍した。
・簡易輸送ユニット
機首全体が簡易コンテナになっているユニット。積載量は小さいが、大型輸送機が着陸不能でかつ緊急性が求められる事例での物資輸送に利用された。
・探査ユニット
怪現象の観測及び予測のためのデータを収集する重要なユニット。電磁波・音波・光波・重力波など、当時考えられるあらゆるエネルギー波を検知するためのレーダー&センサー類が凝縮して搭載されている。空中から地底の地震波や大気圏外の太陽電磁波の観測も可能であった。
・アームユニット
もっとも異彩を放つユニット。機首全体が巨大なマニピュレーターアームとなっており、このアームで岩や瓦礫の撤去や破砕の他、移動不能になった車両や小型船舶などの移送にも使用される。ハイパーモードを駆使し機体本体を垂直に立ててV/STOL機動を行えば、かなりの重量物でも移送が可能である(ただしパイロットは落ち着かない姿勢で複雑な機体操作を強いられるが)。
FW-1は2004年から2006年の間に40機余りが生産、当時の各地の【UNDF】拠点に配備され、その小さな機体と高い機動/運動性を駆使して世界各地の災害や異変の収拾に活躍した。しかし搭載された7.62mm機関銃が旧軍事装備に一般的な口径だったこと、実際に局地に立て籠もるテロ組織の掃討などに使用されたことなどから、平和主義者からの批判対象になることも多かった。同様に120mmディスチャージャーも、軍用ロケット砲としては一般的な口径だったため、度々糾弾材料にされている。2006年以降には全機の「自衛武装」が撤廃され、純粋な救助作業用機として生まれ変わった。
旧式化しながらもその性能と信頼性の高さから近年まで一部地域などで使用されていたが、2023年に最後の稼働機が退役した。
●FW-2 フェアウイング−2
全長:30.5m 最高速度:マッハ2.8 乗員:1〜8名
高い積載能力と滑走路を必要としない垂直離着陸能力を併せ持つ「究極の輸送機」。機体全長は従来の中型輸送機と同程度だが、長方形の貨物コンテナは同クラスの輸送機の三倍以上の積載量を誇る。基本構造は概念的にはUN-XBと変わらないが、一見して分かるとおり多くの点が改良されている。
角張ったシルエットはとても空を飛べるようには見えないが、HPE宙/空エンジンを内蔵した二枚の【W.I.N.G.SYSTEM】の揚力と推進力、更に胴体下部後端に配置されたHPEエンジンが、この巨体の超音速長距離飛行を半ば強引に可能にした。当然空力を優先した機体に比べれば燃料消費の無駄は多くなるが、巨体故に燃料搭載量も莫大になるため問題とされなかった。もっともこれは正確には、この機体形状&重量と燃料搭載量から試算した速度と航続距離が要求仕様をクリアした時点で、コンテナ部形状を左右する空力性能向上は度外視されたというのが正しい。なお宙/空兼用エンジンを搭載してはいるが、機体構造は宇宙運用を想定しておらず、大気圏内専用機となっている。
V/STOL時には機体下面各部に設置されたV/STOL用HPEノズルを使用するため、【W.I.N.G.SYSTEM】はUN-XB同様に単純な二次元可変翼となっている。ただし最大積載時の離陸&飛行重量に耐えるため、本体及び可変機構を含めた翼強度は最優先された。また翼可変範囲はFW-1の構造にヒントを得て、FW-1同様後方へ一直線上にに畳めるように設計されており、完全閉翼時には機体全幅が開翼時の半分以下になる。閉翼状態でV/STOL機動を行えば、幅15m長さ40mのスペースさえ有れば離着陸が可能である。
最大の特徴はコンテナ部の機構とその運用方法だ。コンテナ部は本体から独立したブロックになっていて、搬入出時はコンテナ部のみが下方へスライドする。このため地面すれすれの高さで各ハッチ類を展開することができ、搬入出が極めて簡便になっている。コンテナ部のフレームは強靱に設計されていて、前面や側面に大面積のハッチを開くことが可能で、UN-XB時に指摘された「着陸場所に機体前後方向の余裕が無い場合の搬入出路の確保」がクリアされている。UN-XBで採用された機体後方上部のコクピット配置の応用が、エンジン/翼/コクピットを含む「胴体」と純粋な「貨物コンテナ」の完全分離を実現した。真下を含めた下方視界はカメラ映像と近距離センサーで確認、搭乗員の乗降はリフトで行う。
本体からコンテナのみを切り離すことも可能で、この構造が多彩な運用方法を生み出した。輸送効率を優先した通常の汎用輸送空洞コンテナ/コンテナ上下を二階層に仕切り、一階層の左右に12部屋計24部屋の簡易居住区を持つ「避難住居コンテナ」/医療物資のみならず充実した医療設備とスタッフを載せて、現場に即席病院を開設可能な「病院コンテナ」/自走車輪を持つ5m四方のロードプレート20台を搭載し、コンテナ自体の展開も合わせて100m近い簡易滑走路を形成させ、コンテナ後部に設置されたミニカタパルトを併用することで、滑走路破壊などで使用不能になった空港で小型航空機の離陸を可能にする「カタパルトコンテナ」など、数種類の特殊機能コンテナが用意され、発生した事態に合わせて状況に特化した救援装備を積んで出動するのである。
本体部左右空気取入口付近に自衛用・障害物破砕用として12.7mm機関銃を装備。これもFW-1同様批判対象になることもあったが、実際の運用時にこの装備が使用されることは無かった。もっともこれは、テログループなどの攻撃が予想される場合には大抵FW-1が護衛についていたことが理由でもある。
一見理想の救援輸送機と思えたFW-2であったが、実際の導入・運用面では問題が多かった。特殊構造の塊でサイズも大きい機体は極めて高価かつ整備性の低い物になってしまい、各種特殊機能コンテナは、その仕様が特化すればするほど「万一の事態」に常時備えるには維持コストが馬鹿にならず、性能を最大限発揮できる状態で維持の可能な【UNDF】支部基地はおのずと限られてしまったのである。新方式の飛行システムでかつ大型重量級機であるためパイロットの育成に時間と費用を要求したこと、燃料であるHPEが当時はまだまだ価格も生産量も大量普及には及ばぬレベルであったことなども重なり、FW-2の全世界普及へのハードルは高すぎたと言わざるを得ない。
結局の所FW-2は、2004年に最初に生産された8機が一部の【UNDF】支部基地に点在配備されるに留まり、事実上の主力救援機の座はベテル228VRに明け渡す形となった。世界を救う翼を目指しながら残念な結果に終わったが、その画期的な設計は後のTPC時代の特殊機開発に大きく影響を残している。
FW-1と同様に2006年には全機の武装が撤廃され、大型災害限定で運用されたが、現在はダイブハンガー航空司令部公開記録館に一機が展示されるのみとなっている。
○FW-OB フェアウイング・オービタルブースター(計画のみ)
当初の計画では、FW-1は単機での大気圏離脱/再突入をも可能とする機体になる予定であり、宇宙で何か異変が察知された場合に、自力で大気圏を離脱して異変を観測、その後再突入して帰還するという運用計画が盛り込まれていた。しかし当時の【W.I.N.G.SYSTEM】内蔵HPEエンジンの推力、及び燃料消費率では単機での宇宙往復飛行には不十分であり、更にコクピットの設計が宇宙での長時間生命維持において信頼性に欠けるとされ、FW-1の本格的宇宙投入は見送られた。
【NSDA】の宇宙開発計画の一環としてのFW-1の衛星軌道での運用実験において、宇宙機動及び大気圏突入自体が可能なことが証明されたこと、世界各地の宇宙機関から宇宙での怪奇現象や未確認飛行体の報告が急増しつつあることなどから、カシムラ・チームの中でも特に【NSDA】から出向していたメンバーがこの結果を良しとせず、現在利用可能な装備を駆使して本格的なFW-1宇宙投入を実現すべく計画したのが、このFW-OB(Orbital Booster)である。
FW-2のコンテナ基部にレールギアを設置し、コンテナ部を左右に開く機構を設置、コンテナ内部には収縮式の上昇用HPE燃料タンクを搭載する。展開した左右コンテナの間に出来た空間には、FW-2本体のHPEエンジン出力を増強するターボユニットと、FW-1を接続するためのコネクトユニットを設置。開いた機体の先端にFW-1を接続し、FW-2のHPEエンジン+ターボユニットの出力を利用して成層圏ぎりぎりの高さまで上昇、そこからFW-1を切り離して大気圏外へ向けて上昇させるという、従来の多段ロケットの原理を応用したプランである。FW-1は余裕を持って宇宙へ上がることができ、残されたFW-2は空になった上昇用HPEタンクを収縮させ、空いた空間にターボ&コネクトユニットを挟み込む形でコンテナ部を閉じ、通常形態で基地に帰還する。
衛星軌道監視防衛ステーションの設置と機動宇宙艇NSDA-2000の配備促進、及び【NSDA】本家が開発していた宇宙航行用システムの実用化の目途が当初の予定より早まったため、この計画自体は日の目を見ずに終わっている。だがこのプランのために提案されたいくつかの機構が、後に違う形で有効に転用されることになるとは、当時の開発陣の誰一人とて予想していなかった。
○NSDA-2000SC コスモアタッカー(参考)
全長:18.7m 乗員:1〜6名
【NSDA】が2000年に開発した汎用機動宇宙艇。
原型となったNSDA-2000は、本来は各宇宙施設と地球との間を往復する連絡艇。無〜低重力での機動に優れ、当時の従来型ロケットエンジン搭載機の中ではトップクラスの航宙速度を誇り、大気圏突入能力及び最低限の大気圏内飛行能力も持っている。ただし大気圏離脱には専用ブースターの装備が必要であった。
その汎用性の高さから、宇宙での大量物資輸送を除いたあらゆる局面で使用されており、一時は「世界平和連盟専用機体」のベース機候補にも挙がったが、大気内飛行性能が高くないことと、従来型ロケットエンジンの大気汚染問題及びエネルギー効率の悪さから、採用は見送られた。しかし宇宙での実績は評価されていたため、大気圏内〜亜宇宙は新開発の【世界平和連盟専用機体】に任せるとして、こちらは衛星軌道〜惑星・衛星間を担う形で配備が進んだ。
2006年、エンジンを高出力HPE宇宙エンジンに換装した改修案が出され、NSDA-2000Sとして全ての機体を改修。航行エネルギーの効率化と無害化、単機での大気圏離脱実現といった高性能化が行われた。更に2007年には、装甲材を強化した上にレーザー砲などの武装を追加、対宇宙怪獣/敵性異星人撃退用改良機NSDA-2000SC(通称コスモアタッカー)として生まれ変わった。GW-01Aの宇宙配備が思うように進まない中で、NSDA-2000SCは既存の機体の改修及び各宇宙基地での生産ラインが使用できることから、月面基地ガロワを始めとする各宇宙施設に続々と配備され、2000〜2010年代の太陽系防衛の主戦力となった。
ネオ・マキシマ・エンジンが宇宙航行の主流となった現在では、旧式化のため退役が進んでいる。
○ベテル228VR ペレカーナ(参考)
全長:17.6m 最高速度:1050km/h 乗員:2〜4名
在ヨーロッパ航空三社が共同で開発し、【UNDF】合流直前の旧NATO(北大西洋条約機構)が採用した小型汎用救援機。「BTER」は三社の頭文字を並べたもの。
無公害で比較的安価、かつ手配の容易な水素を燃料とするハイドロジェットエンジンを両主翼に搭載し、エンジンブロック及び第二主翼に最大仰角120°の可変機構を持つティルト・ウイング方式を採用することで、垂直/短距離離着陸を実現しているのが特徴である。更に第二主翼を畳むことで、開翼時24.4mの全幅を17.4mまで縮小でき、これにより最低20m四方の平面があれば垂直離着陸が可能であった。山岳・密集都市・多数の歴史的建造物のパッチワークで構成されていると言っても過言ではない欧州において、このような機体が開発されることはある意味必然であったと言える。
エンジンは新方式ながらも基本的に単純な構造で、エンジンを除く機体構造に至っては従来的な「極めて常識的な機体」である。また輸送機としては小型の部類に入るサイズで積載量もそれなりであり、最高速度は亜音速、航続距離も決して長いとは言えず、FW-2に比べれば何一つ高性能とは言い難い。しかしながらその開発思想の根本はFW-2と基本的に同じ物であり、何より価格の安さ、生産性/整備性/信頼性の高さ、操縦の簡便さからその評価は高く、旧NATOを母体として活動を開始した【UNDF】ヨーロッパ支部の元で欧州全土に一気に普及した。
FW-2の実用量産普及に問題有りと判断したサワイ事務総長がこの事実に注目し、当初はFW-2の穴埋め的機体として【UNDF】制式救援機に暫定採用。その後FW-2の普及が滞ったことや、サワイのお膝元である極東日本の地形事情に228VRが極めて効果的な活躍を見せた現実もあり、その後の【TPC】体制においても、事実上の主力救援輸送機として多くの機体が世界の空を飛び回る結果となった。後のGWシリーズを「驚異に立ち向かう【GUTS】の顔」とするなら、この228VRこそ「市民に手を差し伸べる【TPC】の顔」と言えるだろう。
細部の改良を重ねながら延べ300機を越える機体が生産配備され、生産開始から四半世紀を経た現在もその多くが現役で稼働中である。
*3 詳細はFW-OBの項参照
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*4 熟練したパイロットの中には、完全マニュアル飛行で機首重量の変化に対応できた者もいたという。これに限らずFW〜GWシリーズには多くの制御サポートプログラムが実装されていたが、後の怪獣や異星人の使う電磁・電子的攻撃によって使用不能になるケースも多く、プログラムを介さずフルマニュアルで機体を制御する技術を持つパイロットは現場で重宝された
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