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←対”怪獣”戦闘機
ネオ・フロンティア→
●GW-01D
●GW-01T
●GW-01i
●GW-EX-J
・alfa
・beta
ガッツウイング・バリエーション
対怪獣攻撃用の「標準兵器」として認知されたGW-01A/02Aは、その設計データの全てがオープンな状態で世界各地の【GUTS】各支部に配布され、各支部用の機体はそれぞれの施設で独自に生産された。これは一拠点により生産された機体を各支部へ移送する時間的ロスを無くすことと、たった一つの生産拠点が稼働不能になった場合に機体供給が不可能になる危険を避けるための措置である。実際にGWシリーズの開発拠点であったダイブハンガーが、敵性知性体による直接攻撃を複数回受けているが故の判断であった。
この生産方式により、GW-01A/02Aは急速に世界中の【TPC】防衛隊に配備が進み、また関連組織内で完全公開された設計データは、各支部独自の装備や改装を多数生むこととなった*21。また地球防衛の中心的存在となった【GUTS】極東本部自身も、次々と現れる強力な怪獣や侵略宇宙人に対抗しうる新たな力を模索し続けた。
この項ではそんなGWシリ−ズの多くの「兄弟機」達の中から、特に代表的なものを紹介する。
●GW-01D ”クリムゾンドラゴン”
開翼時全長:16m 大気圏内最高速度:マッハ5.0 乗員:1〜2名
【GUTS】ヨーロッパ支部が開発したGW-01A改装機。
いくつもの険しい山脈と入り組んだ海が織りなす大陸に、多数の国家がひしめき歴史的建造物も多く存在するヨーロッパ大陸にとって、怪獣災害防衛・救助における垂直飛行機動、すなわち「ハイパーモード」の最大活用は必然であった。本機は【W.I.N.G.SYSTEM】が持つ多数の可変ノズルとその制御プログラムを重点的に改良し、精密で複雑かつ長時間のハイパーモード機動をGW-01Aより簡易に行えるようになっている。
ハイパーモード制御の追求は思わぬ副産物も生み出した。機体各部のノズル制御の高度化が、無重力空間での自由機動に高い適性を見せたのだ。【TPC】宇宙施設のヨーロッパ支部管轄区域での飛行実験により、GW-01Dの宇宙適性の高さが確認された。
機首はGW-01A同様ユニット換装式だが、ヨーロッパ支部独自開発装備として三連カノンユニットがある。中央にニードル、左右にビームカノンを持つ重火器ユニットで、高い攻撃力を持つ。大気圏内ではその重量と機首形状が飛行性能に影響する面もあったが、宇宙機動においては特に信頼性の高い装備となった。
重火器ユニットによる外観の異様さから試作時に”サラマンダー”(火竜)のコード名で呼ばれたこの機体は、完成後はその塗装と形式記号から”クリムゾンドラゴン”(深紅の龍)の異名を与えられた。2009年にヨーロッパ支部正式機として普及した後、2015年以降はその宇宙性能を評価され、三連カノンユニットを装備したGW-01Dがヨーロッパ仕様の赤塗装のまま【TPC】制式宇宙戦闘機として採用された。NSDA-2000SCに代わる2010年代の宇宙防衛の主力として各宇宙施設に配備され、現在も稼働中である。
●GW-01T ”ブルートルネード”
開翼時全長:15.5m 大気圏内最高速度:マッハ6.0 乗員:1〜2名
【GUTS】北アメリカ支部が開発したGW-01A改装機で、”ブルートルネード”(蒼き旋風)の通称を持つ。
広大な面積の北米大陸を全面カバーするために、北米支部が特に追求したのが高速性能であった。二枚の尾翼を渡る形で推力補強用のサブスラスターと姿勢制御用のスタビライザーが追加されており、HPE宙/空エンジンにも改良を加えることでGW-01Aを越える速度と航続距離を実現している。
独自の機首ユニットして用意されたマッハノーズユニットは、その名の通り大気圏内極超音速飛行での直進安定性をを高めるフォルムになっている。ユニット内部の大半は超長距離レーダーシステムに当てられ、北米大陸全域の索敵を可能とした。高速性と超長距離索敵を優先した設計は、しかし機首形状の制限と武装搭載能力の軽減を強いることとなり、固定武装はノーズ直下に搭載した二門のニードルに限られる結果となっている。
2009年に北米支部採用機として、北米カラーである青塗装のGW-01Aとともに防衛任務に就いたが、2010年の”ガタノゾーア決戦”直前に世界各地に飛来した高速飛翔怪獣ゾイガー迎撃時に、出撃した飛行中隊が全滅するという憂き目にあっている。その後も少数が生産されたものの、2013年には北米支部上層部が独自の新機体開発と「イーグル・プロジェクト」への参入に力を入れたため、2016年には生産が終了し現在は全ての機体が退役している。
●GW-01i ”エメラルドイクシス”
開翼時全長:14.3m 大気圏内最高速度:マッハ4.3 水中速度:55ノット 最大先行深度;800m 乗員:1〜2名
目視を含めてある程度の観測方法が確立されている陸上及び空中に出現するものに比べて、海中に出現する類の怪獣の捕捉は、ある意味で極めて厄介だと言える。ほんの少し潜れば途端に視界が聞かなくなり、電波式レーダーは使用できず、広範囲海域を瞬時に探知するような超強力なアクティブソナー(能動型音波探知機)は、強力すぎれば従来の海中生物によからぬ影響を与えかねず常用は難しい。沿岸や船舶・海中施設を襲撃してその存在が明らかになるようなケースは、誤解を恐れずに言えば「まだましなほう」で、海中で発生した怪獣が深い海の中で人知れず生態系を荒らしたり危険物質をばらまいたりした場合、陸上の人類にその影響が伝わる頃には既に手遅れという事にもなりかねない。貴重な生態系や人類に必要な食糧を護る手段が限られていることは、【TPC】にとって頭の痛い問題であった。
海中怪獣に対する早期警戒のために、その管理下に広大な漁業域を持つ【GUTS】南太平洋支部が【TPC】海洋開発センターと共同し、多大な予算と持てる技術を注ぎ込んで開発したのがこの前代未聞の「水空両用機」、GW-01iだ。飛行形態で目的の海域上空まで飛来し、減速して海面まで降下、閉翼形態で海中に突入。水中速度55ノット、最大潜航深度800mという性能で水中活動を行い、任務終了後は加速しながら海面へ浮上し、V-TOLノズルを噴射して上昇、翼を開いて飛行に移る。
特異な形状の主翼はこの機体の最大の特徴である。GW-01Aのハイブーストノズルを廃し、代わりに海水を吸い込んで噴射する水流ジェットモーターを搭載している。前後のノズルはどちらも上下に大きく左右にも僅かに可動するようになっていて、水中での自在な機動を実現している。またモーターの逆回転により後進機動も可能である。外観からは解らないが、機体フレームも強化され耐圧性能を確保している。また専用設計の尾翼は飛行時は勿論、水中でも機体の機動制御を行う。
もうひとつの大きな特徴はコクピットにある。GW-01Aの脱出用コクピットポッドの宇宙機動機能を廃し、コクピットブロックに簡易潜水艇機能を搭載。水中で機体が使用不能になった場合の脱出潜水艇として機能する。更に耐圧装甲の完全密閉式コクピットハッチを採用し、異様な外観を形成している。機体外の情報は飛行/潜水時共にハッチ及び機体各部のカメラとセンサーで収集し、操縦席のモニタに映像及び文字情報として投影する。
潜航艇としての性能は「ドルファー202」の69ノット/20,000mには到底及ばず、また重量増加とハイブーストノズル撤去は少々の飛行性能と全ての航宙性能を犠牲にしたが、単機による現場海域高速到達と海中活動の両立は類を見ないものであり、太平洋の現状把握及び海中怪獣早期撃退に大きく役立った。
機首ユニットの四門のうち内側二門はソニックジェネレーターで、音波を使った探査や生物誘導、怪獣へのピンポイント音波攻撃などに利用された。外側二門は200mm魚雷発射管に当てられ、小径ながら多彩な攻撃魚雷が最大六発搭載可能。ただし炸薬の選択は海中汚染や他の生物への影響に最大限配慮された。
南太平洋支部カラーの鮮やかなグリーンと機体記号から、”エメラルドイクシス”(碧の魚)と呼ばれた。極めて高価な機体となってしまったことがネックとなり、生産は南太平洋支部所属の四機に留まったが、”ユザレの試練”後半期の海中状況把握に寄与した貢献は大きく、”ガタノゾーア決戦”直前の古代都市ルルイエ浮上の予兆も僅かながら観測していた形跡があるという。だが残念ながらルルイエ浮上時に四機を格納していた海上基地が”闇”に飲み込まれて壊滅、全ての機体が失われてしまった。その後はG-EAGLEによる「ガッツマリン」搬送体制の確立で海中警戒は維持されているが、今も各支部からその使い勝手の良さを求めてGW-01iの再生産案が時折打診されるという。
●GW-EX-J ガッツウイング・エクストラジェット
全長:41m 最高速度:マッハ7.0 乗員:1〜5名
怪獣災害及び敵性知性体による侵略活動は、基本的には文字通り「発生地域を選ばない」ものであったが、地域ごとの発生件数で統計した場合、極東地域での発生率が不思議なほど突出している。この傾向は2007〜2010年の”ユザレの試練”期のみならず、2017年以降の”スフィア大戦”期でも続いた*22。その真の原因が何であれ、当時発生集中地域に置かれて度重なる苦戦を強いられたのは、【TPC】極東本部基地ダイブハンガーにその身を置く【GUTS】極東本部であった。
GW-01A/02Aの特性の違う二機のよるフォーメーション攻撃は、高い効果を生む一方でいくつかの問題点も浮き彫りにした。一つはGW-01A/02Aの速度差による戦闘空域到達時間の差である。神出鬼没の怪獣・異星人に対し、二機の速度差のために有効なフォーメーション攻撃の機会を失う例はしばしば見られた。もう一つはGW-01A/02Aのオプション搭載能力の限界である。従来の航空機に比べればオプション搭載能力の高いGW-01A/02Aではあったが、怪獣や異星人などの特殊能力に対抗するための新型特殊装備はえてして大型になる場合が多く、小型機であるGW-01Aや事実上デキサスビーム用飛行砲台と化したGW-02Aの搭載能力には限度があり、何とか懸架方式で搭載出来ても機体機動性の著しい低下を招くことが常であった。
時間をかけて強力な新型機を開発する余裕など無い中で、再び注目を浴びたのがFW-OBの設計データだった。HPEエンジン出力増強用ターボユニットによる強大な推力を用いて、成層圏まで上昇してからFW-1を打ち出すというFW-OBの設計思想は、高い飛行速度を維持したまま「二機合体状態での一機」を戦闘空域へ送るのに有効であり、現場で二機を分離することによって即座にフォーメーション攻撃への移行が可能になる。また上昇用に特化した装備を排除すれば、大型のオプション装備の搭載も実現する。これらの発想から、TPC開発局が現状装備を最大限に生かす形での新兵装運用を実現させた機体が、このGW-EX-Jである。
・アルファ号
全長:32.8m 最高速度:マッハ5.3 乗員:1〜4名
GW-EX-Jの機体本体。FW-OBでのプランを元に、GW-02Aを母体とした。GW-02Aでのハイパーモードの状態でボディを固定し、開いたボディの間は後半部がHPEエンジン出力増強用ターボユニット、前半部は換装式の大型兵器ユニットとなっている。当初はデキサス砲の搭載も考えられたが、当時の技術ではターボユニット併載を前提とした小型化が難しいため見送られ、代わりに熱線火球発射砲「ハイパーブラスター」を初めとする特殊武装が換装装備された。尾翼には大型化した機体の飛行安定性を向上させるための水平整流翼を追加。
主翼先端にはウェポンブロックが設置され、ブロック上部がニードル、下部は換装ユニットとなっていて、熱線砲やスパル・カノン、その他特殊兵器が搭載可能。機首にはGW-02A同様スパル・カノンがあり、コクピットの手前には200mmマルチディスチャージャー二門を装備、各種ロケット弾や怪獣追跡装置「モンスターキャッチャー」などが装填される。
なお翼可変機構自体は健在ではあるが、ウェポンブロックが翼角度に対して連動不能なため飛行時の翼可変は不可能となっており、翼を畳む機会は事実上スタンバイモードのみとなっている。また合体時にマッハ7を叩き出す推力はアルファ号のエンジンによるものだが、分離時は機首が非常に空気抵抗を生み出しやすい状態になるため、単体での最高速度は低減する。
・ベータ号
全長:14.5m 最高速度:マッハ5.8 乗員:1名
機首には当初はGW-01Aの接続が検討されたが、FW-OBと違いアルファ号のGW-02ボディ部分の全てを推力増強のために利用できないため、飛行速度確保のために軽量な新設計小型機が接続された。推力の高い単発の大型HPEエンジン&ノズルに、コクピットと武装を張り付けただけとも言える大胆に割り切った設計の機体で、航続距離は極めて短いが高い推進力と運動性を持つ。可変式の主翼と尾翼は合体時には折り畳まれ、分離時に開いて機能する。
機首下部の武装ブロックは例の如く換装ユニットとなっており、特殊兵器やニードル、熱線砲などが作戦によって選択搭載された。コクピット両脇には30mm機関砲二門を標準装備。乗員は1名のみだが、複雑な機動が要求されない場合の分離連携機動では、無人のままアルファ号からのリモート操作も可能。
ターボユニット搭載によりマッハ7での大気内飛行を可能にしたGW-EX-Jは、合体状態でその高速を行かし迅速に現場へ到着、現場上空で二機に分離して特殊兵器使用を含めたフォーメーション攻撃を行う。
新型特殊兵器の搭載例としては、宇宙寄生体「イルド」が地上に出現させた「イルドタワー」破壊のために投入された分子攪乱ビームがある。ベータ号の機首ユニットに、分子活動を活発化させる遠隔強力電子レンジのような「ハイパーメルトガン」を、アルファ号翼端ユニットには、分子活動を抑制させる逆電子レンジとでも言うべき「ハイパーコールドビーム」を装備し、イルドタワーのエネルギーバリアを持つ外壁に同時照射、バリア形成場と外壁の構成分子を強烈に攪乱することでこれを破壊した。この作戦はGW-EX-Jの初出撃作戦でもあった。
【GUTS】に配備されたGW-EX-J一号機のデータがその有用性を示したこと、既存のGW-02Aからの改装及び各支部でのGW-02A生産ラインの転換が容易だったことなどから、2011年以降GW-EX-Jは世界各地の【TPC】支部で生産・配備された。また2015年以降の後期型ではエンジンをHPE宙/空エンジンからネオ・マキシマ・エンジンに換装。更に高い推力を得るばかりでなく、ネオ・マキシマを利用したビーム兵器をも搭載可能となった。
”スフィア大戦”期にはG-EAGLEの配備が間に合わない地域での重要な主戦力として活躍したが、現在はその役目をほぼ終えて機数を減らしつつある。
*21 2007年から2010年に掛けてのGWシリーズ武装化〜量産の流れは、それ以前の「世界非武装化」の流れと比べれば正に「堰を切ったような兵器開発祭り」とも言え、平和主義的視点から見れば「戦いによって技術を発展させる”愚かな旧人類”の復活」と嘆きたいところでもある。だが現に目前に発生していた未曾有の危機に対し、人々の命と尊厳を護るために尽力した技術者と操縦者達の努力は評価すべきであろう
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*22 うち怪獣災害については前期は”闇”、後期はスフィアの何らかの意志もしくはエネルギーが影響していると後に推測されているが、立証はされていない。しかし”闇”及びスフィア自体は、明らかに意図して【TPC】本部及び関連施設を直接攻撃した記録があり、人類の防衛拠点を把握した上で行動していることは明白である。またこれらと直接的には関連を持たない敵性知性体も、地球の防衛状況を分析した上で【TPC】本部や関連施設を直接狙う傾向が強い。もし本当に「そこに【TPC】があるから悪意が集まる」のであれば、皮肉な話としか言いようがない
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